ハリケーンというマシンが、ダブルライダーからV3に委ねられた事実は否定しないし、V3のために開発したという逸話にものを申すわけでもない。しかし、仮面ライダーV3という戦士の誕生時にこのマシンが既にある程度の完成を見ていた経緯には、ひとつの仮設を立てる余地くらいはあると思われる。このエピソードは、その視点でのみ綴られる、ゲルショッカーとの戦いの日々に刻まれたであろう一コマである。
《 Various-3 三度目の変革》
 ゲルショッカーの猛攻が続くなか、本郷猛と一文字隼人は、自らの戦闘能力をわずかながらもバージョンアップし続けてきた。彼等改造人間に与えられた人工生体組織は、訓練と鍛練を重ねることによって、より強靱でしなやかな能力を蓄積し、発揮することができる。しかし、体内に埋め込まれたメカニズムについては、ある程度の段階を超えると、肉体の強化に併せてそれ自体を高性能化していかなければならないという、ジレンマを抱え込んでいる。
 このことは、サイクロンについても同じことが懸念されていた。
 ショッカーが開発した旧サイクロンを改良し、更にそれを凌駕するニューマシンを造り出すことはできたが、このニューサイクロンもまた、一度の戦闘時に性能の限界を引き出し続けることが多くなってきたのだ。
 本郷は、立花モータースの人脈を通して、オートバイメーカーの技術者の協力を取りつけ、デュアルパーパス性能を持つ新しい車体設計にあたっていた。
 
Various-3とコードされたこのプロジェクトは、愛機サイクロンの「3度目の変革」「多様化する性能」「多方面から得られる協力」を意味するものだ。

 「時速600kmっていうのは、お前にはともかく、カメラマン上がりの俺には持て余すなあ。目はついていくんだけどな、おっかないよ」

 一文字が苦笑いする。事実、テスト走行では、2人ともまだその最高速度を出しきることができていない。

 「通常、地面を走るんだから、タイヤとサスの動きを別にしても、もっと直進安定さがほしいというか、横方向へのぶれをなんとかしたい。フロントのウイングだけでは、これは解決しないと見た」
 「俺も同じ意見だ。走っていて不安定なら、ジャンプしたときの降下フェイズを考えたら、尾翼というか、垂直安定舵的なものをテールに追加した方がよさそうだな」

 本郷は、ニューサイクロンの基本性能をベースに、更なる高性能化策としてフロントウイングの揚力アップだけでなく、ロケットブースターによる加速能力と滞空時間の向上を狙っている。減速時にはドラッグシュートだけでは間に合わず、逆噴射ブースターも装備した。今はパーツの製作中だが、この速度域から得られる強力なエネルギーを取り出すために、自分たちへのチャージ用風車ダイナモも取りつけることになっていた。
 新デザインの車体も、これまでのサイクロンと比べ、獰猛で攻撃的なシルエットだ。その雰囲気に呑まれているなと、一文字は感じていた。

 「なあ猛よ、楽観的なことを言って悪いが、このマシンは、はやいとこゲルショッカーを倒して、のんびりできるようになってからアメリカあたりで草レースにでもエントリーするときのために仕上げていく。そんな気分でやってもいいんじゃないか?」
 「そうだな。できることなら、こいつに頼らずに奴らを壊滅させたい」
 「俺たちならできるさ。お前はもっと自信を持てよ」
 「すまんな、隼人。どうも俺は心配性なのでな」
 「よし、この際だ。こいつはサイクロンカラーをやめちまおう。俺がカラーリングを考えてやる。サイクロンって名前も卒業させよう。もちろんVarious-3のマークはボディに書き込むとしてだ。こいつはサイクロンを、俺たちの理想も超えるマシン、ハリケーンと命名しようぜ。それでアメリカに殴り込みだ」

 一文字は快活に言った。その突拍子もない発想に本郷はあっけにとられたものの、盟友の気遣いに感謝するのであった。
  

※お断り この物語はつくばーどオリジナルであり、「仮面ライダー」には、直接結びつきません。