《スパーカー》

 地質を調べるもの。似たようなものとしてボーリングなどがある。また、海上保安庁で行っている沿岸海域海底地形調査でも活用されている。浅層部を対象に高解像力を得る磁歪振動式音波探査機(ソノストレーター)と呼び、深部を対象とする高出力の放電式音波探査機を「スパーカー」と呼び・・・ちがった。

 スパーカーは、一対の巨大なテールノズルと、鳥の嘴のようなフロントノーズが独特のディティールを構成するオートバイだが、驚いたことに、内燃機関のようではあるが、スロットルを吹かしたときのエンジンノイズが、通常のツイン以上マルチシリンダーの音ではない。
 スロットル開度に応じて低音から高音域を自動再現する合成音のようである。するとこのマシンはEVなのかとも思われるが、そのスロットル開度によって、テールノズルから排気やその発光も見られる。電気モーターとは異なる燃焼系エンジンのはずなのだ。
 テールノズルにはブースターとしての点火機構もあるらしい。おそらくメインのエンジンがレブカウンターを刻むあたりで点火系が作動するのだろう。そうでなければ、いかにリア側へ重心を偏らせてウイリーしやすいディメンションであっても、全高52mに及ぶムー帝国の遺産・ライディーンにフェードインできる高さまでのジャンプは不可能だろう。
 ライディーンの胸部近くの高さまでジャンプしたスパーカーは、搭乗者ひびき洸を、ライディーンの額から放たれるトラクタービームに送り込み、自らはライディーンの腰部に格納される。しかしスパーカーそのものは、ライディーンとのコンビネーションのために開発されたマシンではない。ひびき洸は、ライディーンが発見される以前から、このマシンに乗っている。ライディーン出現と復活の流れで、フェードインに合理的な方法として、一時的に活用されていたに過ぎない。
それでも割り切れない状況と謎は、いくつかある。


 スパーカーは、ビッグシェルとも科学要塞ムトロポリスとも呼ばれる「ムートロン研究所」の前身、「未来工学研究所」によって開発されたものと思われる。この研究所は、未知のエネルギー「ムートロン」の研究機関だが、その研究過程で、古代ムー帝国のオーバーテクノロジーと、その滅亡に関わる妖魔大帝バラオの存在を、ある程度察知していたらしい。
 そのため、巨大な貝殻の開閉ドーム機構を持つ研究所は防衛武装以上の科学兵器を所有し、各種調査から戦術戦闘までを引き受ける特殊チーム・コープランダーをも組織している。コープランダーは、万能飛行重戦機ブルーガーと軽戦スピットファイターを駆使して任務に当たる。このブルーガーの機体のフロント部分と、スパーカーのフロントデザインには、共通のデザインワークスが見受けられる。
 つまり、スパーカーもコープランダーの特殊装備として開発された経緯があるかもしれず、その根拠の一つとして、マイクロミサイルを搭載しているのだ。
 これらは、ムー帝国の遺跡のひとつである人面岩が伊豆半島で発見され、ムー帝国の埋もれた歴史の発掘から、超エネルギームートロンの存在と、これを狙う妖魔帝国の復活と侵略という、ある予言がもたらした危機管理対策の一環だ。ただし、この件に対して国は当初、それほど関心を抱いてはいなかったらしく、国会での議論が白熱するのは化石獣とライディーンが戦い、周囲に被害が及んでからのこととなる。

 
 最終的に、ムートロン研究所の活動を国が容認しなければならなかったのは、結果として対妖魔帝国の切り札となりうる唯一の機関であり、ライディーンを動かすことの出来る搭乗者が、ムーの血脈であるひびき洸以外に無かったからだ。
 そのことを、国は妖魔出現以前から、実は認知していたはずである。妖魔を撃退し、ムートロン技術を手に入れられれば、輸入大国であり、資源に乏しい国土という国際的ハンデを覆すことが出来る。そういった利権が、ムートロン研究所のバックボーンにあったとしても不思議はない。表向きは夢物語と無視を決め込み、被害状況に応じては渋々国会議事に取り上げるも、うやむやにしていく超法規的措置が発動していたのではないか?
 事実、バラオは復活し、日本は多大な被害を受けることとなり、切り札であるムートロン研究所とライディーンに運命を委ねざるを得なかった。

 だからなのだ。
 臨海学園サッカー部キャプテンという肩書きでしかない一人の少年が、平時の頃から中学三年生にして危険な武装バイクを乗り回していても、そのような細かいことは、この際どうでも良かったのである。