FIREFLY(ジェットブルドーザー) |
《合理性と強引さを備えた救助装備》
国際救助隊の特殊救助機器は、その全てを長距離輸送機TB−2が災害現場へ空輸する。
国際救助隊のメンバーにしか知らされていない最重要機密事項として、救助隊基地は絶海の孤島(ただしトロピカル・パラダイスと呼ばれる楽園的環境下)に秘匿されている。このため、トレーシー島から世界中のあらゆる場所へ1時間以内に急行するという彼等の出動態勢からも、高機動輸送機による空輸は必然なのである。
TB−2は、その用途から胴体内に救助機器の格納ペイロードを有するが、発生する災害の内容・状況に応じて、現場に投入する機材を迅速かつ的確に選択・搬送しなくてはならない。そこで、いくつかの救助シフトを類型化し、その救助活動に最も適した機材をあらかじめ6通りのパターンに基本分類し、それぞれ専用コンテナ(POD)に格納待機させている。TB−2は出動時に、採用する装備を決定し、これを格納したPODを機体に組み込むことで、出動時間の大幅な短縮を実現している。
ただし、場合によっては、装備の臨時組み合わせも行われており、いくつかの機材はPODナンバーを変えて搭載されることもあるようだ。さらに、これらの機材の多くは、TB−2専属パイロットのバージル・トレーシーが、ほぼ一人で運用する。被災者が多数に渡る場合や、救助隊側での複数ポジションでのミッションが行われる場合などは、先行到着して移動司令所を担当するTB−1パイロットのスコット・トレーシーも、司令所を離れて救助機材に乗り組むことがあるが、高速エレベーターカーや磁力牽引車などの複数同時運用に対応するシステムとして、無線誘導による遠隔操作が可能になっている。
合理性と強引さが同居するレスキューメカの数々。たとえばFIREFLYはジェットエンジンを搭載したブルドーザーで、障害物除去の初動行程は、速射機関砲による目標の粉砕だ。高熱の火災現場へも突入するため、パイロットは耐熱服の着用が義務づけられている。
磁力牽引車(RECOVERYVEHICLE)は、2両編成で500tを越える4足歩行戦車「ゴング」を、転落した廃坑から引き揚げてしまう、物理法則的に驚くべきリカバリー能力を発揮する。
そして、彼等の傑作機とも言うべきジェットモグラ(MOLE)は、地下への強行突入、救助、離脱だけを目途に置いた特殊な掘削機械だ。従来のシールドトンネル掘削機械を例に挙げると、円筒形のボディは共通だが、先端部にはドリルはついていない。ボディ断面と同じ直径の円形盤面に、放射状にカッタービットを設置し、泥水を吹き付け加圧しながら盤面を回転させ、掘削するというものである。さらに掘削したあとの坑道確保として、セグメントと呼ばれる内壁板を打ち付け、トンネルを形成する。
ジェットモグラは、トンネル掘削が目的ではないため、後方の落盤は考慮しない。また、短時間で目標到達を果たすことが前提であるため、カッタービットと泥水加圧で地下層をなじませるような丁寧な掘削も必要としない。ジェット推進と超硬質大型ドリルで、有無を言わせず掘削推進するのである。驚くべきことに、離脱は掘ってきた坑道をそのままバックする。ボディ側面の地下用キャタピラが補助掘削装置として機能するのだが、ジェット推進の吸排気がどうなっているのかは、前進時も含めて高度な機密として明かされていない。 |