《路傍の花のように》 
 岬 ユリ子には、過去の記憶がおぼろげにしか残っていなかった。
 彼女は、ブラックサタンによって改造電波人間にされた際、脳改造の前提として、無駄な記憶は消去されていた。
 脳改造直前にストロンガーに救出され、共に組織を脱走するに至った彼女には、戦うこと以外に、現在と未来をつかみ取り、新しい記憶を刻みつけていくための選択肢はなかったのだ。
 ブラックサタンを退けた後、デルザー軍団の幹部、ドクターケイトの猛毒を受け、相打ちのウルトラサイクロンを放つまで、その苛烈を極める戦いは続いた。
 彼女にはストロンガーというパートナーと、立花藤兵衛という後見人があったものの、常に彼らの足枷になったはならないという、自分自身への重圧とも闘わなければならなかった。
 そんな彼女を、彼女のためにだけ尽くし、支えとなったのが、テントローである。
 際だった戦闘能力は持たないが、高性能レーダーが装備されており、偵察行動で活躍した。
 彼女の亡き後、テントローは立花モータースでひっそりと余生を送っていた。
 ある日、バダンの暗躍は立花と、そこに身を寄せていた城茂の身にも及ぷ。
 ゼクロス部隊の猛攻によって、危機に陥った茂ことストロンガーは、起死回生の逆転をねらって超電子ウルトラサイクロンを放つ。
 テントローは、その余波に巻き込まれた滝和也と立花を護るため、盾となって全壊した。