《ハリケーン》


 仮面ライダー1、2号、V3の活動エネルギーは風であり、アギトを除く歴代ライダーの中で唯一、オートバイに「嵐」の名前が付けられています。インド洋に発生する台風「サイクロン」に対し「ハリケーン」は大西洋の台風。人為的に風を起こし、エネルギーを得るために、仮面ライダーにとってオートバイはなくてはならない存在。それを端的に表した命名というわけです。
 ハリケーンは、ニューサイクロンに続く次期マシンとして、ダブルライダーが設計・開発を行っていた第4世代のサイクロンともいうべきオートバイです。想像の域を出ませんが、これがV3に与えられた時点では、まだプロトタイプ的な要素が残っていたのではないかと思われます。それはハリケーンが試作車にありがちなトリコロールカラーであることや、フロントカウル部分に用途不明のタイフーン(風車)が取り付けられていることなどからの推測です。当時、ハリケーンも風をエネルギーとして動くような記述が児童雑誌にありましたが、これはどうやら、原子炉と連動した一次タービンに風(空気)を送り込む構造になっているようです。しかし車体の両サイドにもエアインテークが装備されているため、冷却系とは別の何かが、タイフーンからの送風に秘密を持っているらしいです。


 ゲルショッカー壊滅後、唐突なデストロンの出現や、本来は予定外の3号ライダーの誕生と、めまぐるしい状況展開。そしてカメバズーガの体内で秒読み段階に入った原子爆弾を投棄するために決死の戦法へ出なければならなかったダブルライダーを思うと、完成型としてのハリケーンをV3に提供することは、間に合わなかったでしょう。
 V3が、戦いながら自らの戦闘能力を引き出していったように、ハリケーンもまた、V3によってメンテナンスやモデファイを受けながら成熟しているものと思われます。
 基本的なスペックは、サイクロンを越える時速600キロの最高速度と、大径化されたタイヤによる走破性の向上、ジャンプ時の安定舵の大型化、強力な制動力を得るためのドラッグシュート等、サイクロンのパワーアップ案が盛り込まれています。
 最大の特徴としてはロケットブースターを両翼に装備し、加速性能の向上に加え、滑空と滞空能力の向上を図っています。制動時には逆噴射ブーストもかけられる念の入りようで、さぞやサイクロンと比べてパワーが上がっているかと思いきや、ニューサイクロンの250馬力に対して、ハリケーンは300馬力だそうです(おいおい、原子力エンジンなんだぞ)
 ところで、ハリケーンのプロップデザインは、SUZUKIのデザイナーによる1970年代当時の“近未来のオートバイ”の表現です。
 翼やブースターはデザインには無いでしょうが、考えようによっては、ファルコ・ラスティコやNUDAなどのコンセプトバイクの祖先と言えるかもしれません。