《007と英国車》

 世界的な著名人(著名だと諜報部員にならないのだけれど)とも言うべきジェームズ・ボンドは、007という諜報部員として、また私的な面でもアストンマーチンを愛用していることで有名です。いわゆるボンドカーと言えば「ゴールドフィンガー」に登場したアストンマーチンDB5。原作ではラジオを利用した追跡装置を搭載するDB3でしたが、映画では沢山の秘密兵器を隠した銀色のDB5となり「サンダーボール作戦」にも続けて登場しました。エンジンは4000cc直列6気筒DOHC。「ゴールデンアイ」「トゥモロー・ネバー・ダイ」では、自家用車として使用しているのですが、これは原作をたどると、情報部がDB5を競売に出し、ボンドが手に入れたもののようです。
 このあと、アストンマーチンは「リビングデイライツ」でV8のDBSヴォランテが使用されますが、直線基調となったヴォランテといえども、そのシルエットやフロントグリルまわりをみると、アストンマーチンのアイデンティティがちゃんと息づいています。
 アストンマーチンは、英国の超高級スポーツカーで、DB1から6、V8(DBS)、DB7へと移り変わりました。第2次世界大戦後、英国の産業家であるディビット・ブラウン氏の援助が入ったあと、タイプ名に氏の頭文字「DB」がつけられるようになったそうです。ボンドカーとなったのは、DB5とV8ですが、2002年の作品ではここ数年定着していたBMWからボンドカーの座を奪還し、V12ヴァンキッシュが採用されました。
 アストンマーチンと並んで、ボンドカーの双璧をなす英国車はロータス・エスプリ。エスプリはジウジアーロのデザインを登用したモーターショウオンリーの参考出展として製作されたものでしたが、発表と同時に高い人気を獲得し、ロータス・ヨーロッパの後継車種としてデビューに至ります。現在のロータスは倒産し、経営権はマレーシアのプロトン社に委譲され、エリーゼを製造しています。
 ボンドカーに採用されたエスプリは「私を愛したスパイ」のシリーズ1(S1)と呼ばれる初期型エスプリ。2000cc直列4気筒DOHCですが、小型潜水艇に変形するという水陸両用モデルとして登場します。また、フロントから銛を射出したり、リアウインドウがスライドし、座席背後から上に向けてミサイルを発射します。ミドシップエンジンの直ぐ上に火器を搭載するという恐ろしいクルマ(笑)
「ムーンレイカー」にはエスプリ・ターボが登場。白いエスプリは車上狙いを図った敵を巻き込んで自爆し、ボンドはメタリックオレンジのターボ・エスプリに乗り換えます。

ボンドカーで英国車はこのほか、「ドクター・ノオ」に サンビームアルパインが出ておりました。