《アイオロスU for MM2000typeR》

aise.Imprve.Draft.Evolution.Ranger.

『強化改造進化特務要員』R.I.D.E.R.は、ある産官学複合研究団体による、次世代環境適応型生命維持システムの開発提言であり、この時代、地球人口の爆発的増加と環境汚染の進行予測に伴い、こうした人体改造適応技術の倫理観には厳しい非難がついて回るものの、その臨床実験施行については国家単位のプロジェクト「GENETECH」が承認されていた。

GENETECHのER計画のひとつ、GS1プロジェクトチームは、強化外骨格とそのマテリアル開発を進めていた。プロジェクトの中枢部分には、外宇宙からもたらされたと言われる未知の鉱石G−Oreの存在があった。

このG−Oreによって、元素転換制御システム概論が確立され、第1号となるRIDER「GENESIS」の誕生が、GS1の成果となる予定であった。

GENESISは、完成すれば、システムを装備する人体を強化外骨格で覆い、あらゆる環境下においても活動を可能とする画期的な計画であった。強化外骨格の元素転換システムはMASKと呼ばれ、ジェネレーターや制御機構は、サポートデバイスとなる機動車両に搭載することとされた。

プロジェクトチームはその車両選定にドイツの工房・ミュンヒ社が開発したオートバイ「マムート2000」をあげたのである。

このオートバイは、マイスター、フリーデリヒ・ミュンヒが製造したカスタムメイドである。

搭載エンジンはシュライヒャー製2000cc、空冷DOHC4気筒ツインインタークーラー付きターボエンジンで、ノーマル状態で既に最大出力260ps、最高速度250km/hというスペックを持つ。インターネットによるユーザー支援がアフターケアとして用意され、車体の基本メンテナンスに必要な情報や、オンライン操作で可能な調整については、世界中のどこにいてもミュンヒの専用サイトにアクセスできれば可能という独特のリリース体制がとられていた。

マムート2000は、西暦2000年にリリースされたものだが、250台のみの限定生産で、当時の価格は86000ユーロ(約860万円)とされた。ユーザーを選ぶ価格でもあったが、これには海外のあらゆる地域に空輸し提供するサービス体制のほかに、ユーザーに対して必ず、ミュンヒ社のスタッフが同行して、基本レクチャーと慣熟運転の実地サポートを行うメニューが含まれていたのだと言われる。

これを探しだし、いったいどれほどの転売価格で入手してきたか、その経緯は不明である。

一つだけ確かなことは、フリードリッヒ・ミュンヒにとって生涯をかけた作品の最高のものであるはずの「マムート2000」をさらに材質レベルから改造し、航法/汎用AIやイオノクラフトサブユニット、各種センサー類などを後付けしてしまう行為は、ミュンヒに対する冒涜とも言える。

300kg近い原車の自重は、それらを搭載しても材質の軽量化により、約250kgまで軽減されている。

写真は、GENETECHに搬入されたばかりのマムート2000。なんと、3台ものマムートが確保されたらしい。

MASKシステムを搭載し、起動時には自らの車体にもガード類を出現させ、フォルムの変化を促すスーパーマシンとなったこれは、「アイオロス」と命名され、1台はプロトタイプとして研究材料に回され、2台目が「アイオロスU」としてロールアウトした。

typeRという呼称は、正式のものではない。アイオロスの開発陣が、符丁として“MM2000typeR”というコードを使用していたことがあるようだ。

後に仮面ライダーGENESISとして覚醒する北浦勇樹のもとへ届けられていたアイオロスUは、ボディをチタンブルーにコーティング処理されたものとなっている。

完成したアイオロスUのフルテストは行われていないため、最高出力、最高速度やその他のスペックは一切不明だ。