《サイドマシン》

 人造人間キカイダーが使っていたサイドマシンですが、あれはキカイダー専用に企画したものではなく、当時の東京モーターショー向けに、東京の大陸モータースがサイドカーグランプリのノウハウを盛り込んで造った「自走可能な車両」だったのです。
 そのマシンそのものを番組で使ってしまったところがすごいわけですね。
 このサイドカー、最高速は180km/hと公表されていたそうです。
 その名は、マッハVGTスペシャル。
 カワサキというと往時のW650ブームから、その先祖「W1」が有名ですが、2サイクルの「マッハ」も、もうひとつのカワサキの顔です。

嵐田の友人で、バイク乗りの田中邦彦さんによれば、カワサキは古くはメイハツ系(純然たる川崎重工業)とメグロ系(メグロ製作所)に分けることが出来るそうですが、メイハツこそがこのマッハにたどりつく2サイクルの源流ということです。
 並列3気筒空冷2サイクル550cc。とことん加速重視でピーキーなエンジン(有効トルクが4000rpm以上で、実質は5000rpm以上がおいしい領域)と特別に低い1速ギアが特徴でした。
 この組み合わせで当時としては夢の数値、12秒4のゼロヨン加速を記録したのです(もちろんマッハ単体であり、サイドマシンのことではない)。一方で剛性不足等々でコーナリングはかなり苦手とされていたそうです。
 ただ、この尖がったコンセプトはわざとやった確信犯であり、「マッハ」という名称もユーザー間でのニックネームではなくて、メーカーがエンブレムを付けています。
 サイドマシンは、イオノクラフトエンジン・・・という番組上の設定は置いといて、特撮プロップでありながら、ダミータンクの側面にはKawasakiのロゴが刻まれ、ボートの側面には、このGTスペシャルのエンブレムが取り付けられているのです。

                    《side machine ver,S.I.C.》

 ダーク破壊部隊、シャドウとの戦いから四半世紀が過ぎた世界。再び蘇ったギル教授の脳を持つハカイダーの手に陥ち、兄ゼロワンとも刃を交えることとなったキカイダーゼロツーは、ゼロワンと、新世代のキカイダー、ダブル・オーによって救出され、戦列に復帰します。
 光明寺博士とゼロワンは、ゼロツー・ジローの愛車サイドマシンを強化改良し、より熾烈な戦闘に耐えうるサポート機能を与えました。
 それがこの「S.I.C.バージョン」です。
 しかしまあ、ボートは人を乗せるためのものではなく、キカイダー専用の各種武器を搬送するためのウェポンラックになってしまいました。さらに、ボートのテールに巨大なロケットバーニアが装備され、初期のリアウイングは排除されています。
 ゼロワン曰く、ボートそのものが、いざというときにはミサイルとして使用されるそうですが、通常はダブルマシン同様、ボート単体での走行が可能となっているようです。
 S.I.C.というのは商品企画で、作品世界観とはさほど関連がありません。
 しかしこの企画でくくられた世界には、キカイダーを主軸としながらも、イナズマン、仮面ライダー、ロボット刑事といった石ノ森章太郎作品のキャラクターが縦横無尽に暴れまくる、独特の世界を演出しています。
 それにしても、「スーパー・イマジネイティブ・チョーゴーキン」というネーミングは、失笑を禁じ得ません。