つくばーどin那珂湊
「つくばーどって、新年会はやらないんですか?」
「あの、そういうオファーを、2月に入ってからしないように」
という会話があったのは事実です。
 やれと言われれば、やらねばなりますまい。でもアウトドア料理の助け人ことシン大尉は公私多忙で頼みにいけないから、必然的にインドアだなと、早くも他力本願な幹事です。
 ここで野郎どもだけなら、白いエプロンドレスで黒のメイド服が待ち受ける(と言われている)、大正もだにずむな某ハヤシライスとオムライスの美味い店に白羽の矢が立ったのですが、それはまた別のお話。
「どうも、LANです。当初の開催予定日だと、自分の誕生日でした」
「すっ、すいません。幹事の都合で1日ずれてしまいました」
結局、新年会でも誕生会でもなんでもありだと、那珂湊水産市場にある寿司屋に繰り出すこととなりました。
 太平洋は荒波状態の茨城県ひたちなか市の那珂湊。古くは7500万年前の貝の化石を見つけることができる白亜紀地層がむき出しになっているかと思うと未来の国際港湾公園都市、常陸那珂開発のエリアにも、ちょっとだけ含まれているところです。
 北側の旧勝田エリアにかけて、太平洋を臨む阿字ヶ浦海岸はサーフィンと海水浴のメッカ。そして国木田独歩が「永劫の海」と呼び、与謝野晶子もうたった海門橋から眺める夕暮れの海が美しい。隣町の大洗を結んで那珂川を渡る海門橋の、建設当時の逸話をもとに、ノンフィクション小説にしたのが、小山いと子です。徳川斉昭の命で建設された、対異国船のための大砲鋳造に使われた反射式の溶鉄炉跡も有名だし、遠浅の海を護岸で覆った平磯海水浴場には、子供たちの人気者、“くじらの大ちゃん”が浮いているのです。
 なにもそこまで力んで観光ガイドしなくても、磯釣りが三度の飯より好きな人なら、那珂湊を知らないわけがない。

・・・で、そういう観光は一切やらずに、ことし最初の集結を果たした一行は那珂湊漁港の水産市場に到着。しかし幹事が「昼からね」なんて、いい加減な予約を入れていたものだから、肝心の宴会場が設営しきれておらず、風花すら舞い始める寒空の下で市場見物となりました。こうなると、暖をとるために蟹汁をすすりはじめるのが大人(あっ、食のパフォーマンスを披露している人が今回は違っている!)。その汁になる前のうごめく蟹をみて喜ぶのが子供です。

 今回たずねたのは、海花亭(かいかてい)という寿司屋で、本来はカウンターにでも陣取って好きなネタを注文したり、名物のデカネタやら板前お任せ握りをねらうのがいいのですが、開店と同時に混雑することもあり、座敷に席を確保しての宴会となりました。これは一長一短というやつで、豪勢?ではあるものの、これぞというネタが出てくるわけではありません。ひとしきり食い尽くして、個々に握りを注文しようと、とりあえず食います。
 そして律儀というか健気というか、寿司をつまみながらも、新型グランドエスクードのカタログを広げてああでもないこうでもないと談義を展開してくれる面々。しかし、ぐうたらな幹事は更なる不手際を路程。座敷をぶち抜きで確保したのは良いが、廊下と座敷の仕切りとなる襖も取っ払われ、廊下を伝ってトイレに移動する他のお客がぞろぞろと見物していく・・・