《つくばーどin乗鞍》

 岐阜県道路公社が管理する乗鞍スカイラインは、標高1684mの平湯峠から2702mの乗鞍岳畳平に至る、延長14.4km、高度差1060mの日本最高度の有料山岳道路です。
 岐阜県側からは乗鞍スカイライン、長野県側からは県道乗鞍岳線を利用して気軽にクルマで登れるため、乗鞍岳は人気の観光資源でしたが、年間20万台もの車両が通行し、夏場の畳平駐車場一帯は、特別保護地区であろうと車と人であふれます。スカイライン沿いの針葉樹の立ち枯れやハイマツの衰退、外来種植物の進入も環境問題として示唆され、ペットの持ち込みが天然記念物のライチョウへ伝染病を蔓延させるとまで懸念されています。
 こうした社会背景から、遂に、平成15年6月末に償還期間を迎えて乗鞍スカイラインが無料化される時点で、同時に県道乗鞍岳線もあわせてマイカー規制が実施されます。
 岐阜県は規制に続いて、乗鞍エリアの環境保全推進のための財源を“環境負荷原因者”に求める方法として、法定外目的税・乗鞍環境保全税(仮称)の導入を検討しています(02年8月末時点)。
 対象エリアは「中部山岳国立公園乗鞍鶴ヶ池集団施設地区及びその周辺地域」。税収の使途は「乗鞍地域の環境保全施策に充てる」とされています。
 疑問に思うのは課税免除の存在で、緊急車両、管理車両、一定の身障者用車両等については課税しないという点。また電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車及びハイブリッド車について、軽減税率を設定するという点。
 環境負荷対策というものには、例外はあり得ないのではないか。環境保護を目的に規制をかけ、課税を実施するにあたっては、すべての車両が対象であるべきで、 乗鞍の観光地の看板も降ろすことが望ましいと思うのです。自然保護センターのような環境教育施設を充実させ、「良質の自然体験サービス」を提供できる体制を整備・・・してくれなくてもかまわないのです。
「それでも登りたい?? じゃあ麓から徒歩でどうぞ」
 それがたぶん、多くの一般ドライバーやライダーの気持ちでしょう。けれども、排ガスの影響やマナーの悪い観光客による自然破壊という指摘。これも現実。でも1975年からマイカー規制を行っている長野県の上高地ではバスツアーの客が、配布された弁当の空き箱を放置していく「ゴミ増大」が顕在化しているといいます。規制をかけてもいたちごっこなのかもしれない。
 ところで、ライチョウは北アルプスでは2000羽たらずしか生存していない稀少動物なのですが、棲息の実態というのは、地球温暖化による高山での生態系の変化だと言われています。
 彼らの食するハイマツなどの限界点が、従来よりも高い高度に移っているそうで、ライチョウの棲息範囲も狭まっている。酸性雨への取り組みを国内の産業が進めていても、大陸から流れてくる酸性雲を、岐阜の条例は取り締まることができない。
 こうなると、乗鞍スカイラインどころではなく、クルマ自体に乗っていられなくなってしまいますね。
「嵐田は環境保護を批判する反社会性分子なのかっ」
 などと叩かれたくないのですが、要は、『税収も含めて対策を講じるため、現在の10倍の通行料金に値上げする。税収収支と使途明細は国民に明確に示す。なんていう提案は出ないの?』
 と言いたいのでした。 それはそれで叩かれる?