関東地方で名のある林道は幾多もありますが、いきなり乗り込んでいっても、まあな
んとかなるというところが、三国峠で信州に抜ける中津川林道。水資源開発公団による
滝沢ダム建設のために、いずれは水底に沈む中津峡の景色は、手軽に楽しめる林道ツー
リングコース。冬期と夜間を除けば生活道路でもあるため、土砂崩れや路肩損壊などへ
の対応も手早い。春に途中撤退した猪苗代の林道の方が、よほどハードコンディション
です。


 延長約18kmのダートは、えぐれた轍に砂利が入れられ踏み固められ、いままさに
工事車両が今日の仕事を終えて降りてくる風景も見られます。現在、トンネル工事の関
係で、秩父側は国道のループ橋を経由し、通常とは対岸の山肌をダム湖の底まで降りて
から林道へと向かうコースに変更されています(一時的なもの)。
 中津川林道には昨年も来ましたが、滝沢ダムには、ずいぶん昔に取材でたずねたこと
があり、ダムの底まで降りられるというのも実に久しぶり。道路から見るよりも深い谷
間の景色がちょっと懐かしかったりします。


 ガタガタ道だぞっ、と登りつめていくと、三国峠の看板の下にはBMWなんかがいた
りする昨今。それでもこの峠の切り通しは独特のもの。冬期には四駆ですら超えられな
いほど強固な障壁を盛り土するという話ですが、もちろん冬期閉鎖の道なので、見たこ
とはありません。
「うわー、景色が違ったー」
 と長女の霰。秩父側は険しい山並みと、山体の崩落を眺めてきただけに、信濃側の
長野県川上村の風景は、いかにも信州という針葉樹林の豊かな山並み。ひと言で言えば
のどかな気分になります。ここから「川上牧丘林道」へと移動するルーティングが、林
道ツーリングの一つのコース。「川上牧丘林道」は、山体崩落の進むさなかをぬけてい
る道で、ガレ場主体の面白いルートですが、大雨の直後だったので今回はパス。
 山を下りてしばし走ると、JR小海線の最高地点と、一番高度の高い駅・野辺山駅が
待ち受け、そこに八ヶ岳の高原が広がっています。
 ちょうど自分が自分の子供の歳の頃に、野辺山から八ヶ岳を臨む街道沿いの野原で、
毎年のように夏のキャンプを張った記憶があります。いや、キャンプを張ったのは親で
すが、連れてこられた頃の記憶をたどると、好き勝手にどこでもテントを設営できたな
あと・・・
 同じ場所で同じアングルの写真を撮っても、変わらないのは山並みの姿だけです。