自分らしく着実に
はな@黒エスクさん TA01W  「Sレイドに至る道」 

 ESCLEVサイトを立ち上げる際、コンテンツの一つにエスクードを軸とした読み物を書いてみようと、事務局Rと事務局Sは、企画の打ち合わせを始めた。
 「やっぱりクロカンを走るエスクードでしょう?」
 「それは『戦うエスクード』でやるんでしょ? もっと日常に近いものがいい」
 「日常に近いと言っても、月まで走るとか週末関東人とか、変なのばっかり」
 「俺、ヤローの読み物書くのなんか、やだよ」
 「えー? 女性のこと書くんですか? そんなのに協力してくれる人いるかなあ」
 「協力してくれるなら、俺は花束と菓子折持って頼みにいくさ」(すいません、行きませんでした)
 「それなら任せますが、エスクードに乗っている女性にアテがあるんですか」
 「それはもう、今のところ・・・1人しかいない」
 ほとんど玉砕覚悟の企画ではないか。
 しかしこの行き当たりばったりの思いつきは、現在のSレイドに発展していくのである。

 「免許を取得する目処がついた時に、街中を走る車を見ていて『あ!あの車かっこいい!何てクルマ?どこのクルマ?』と気になったのが、エスクードのショートでした。車名もメーカーも忘れないようにメモしてたような...
 使い勝手のいい大きさ! これに尽きます。今でも、自分の車を見るとニヤリとしてしまいます。そのくらい、ルックスも好きですね」

 ほら、出逢いの時点で、はな@黒エスクさんは、エスクードを見そめていたのである。この当時のことは後日談としてしか知らないけれど、コンパクトサイズの取り回しの良さで女性ユーザー層を獲得していたこともあり、E−ACT黎明期などのレポートを見ると、女性ドライバーがけっこう登場していた。はな@黒エスクさんもその1人。
 しかしめったに姿を見せないので、そこに希少価値も見出しながら、読み物企画の依頼をしてみると、なぜ姿を見せないのかの理由がわかった。

 「乗り物酔いするのに、こんなに跳ねる車にしちゃったよ。どうしよう〜!!!って思いました。運転できる限界が、1時間くらいなんです」

 いきなり高いハードルが立ちふさがってしまった。
 けれども、対話を続けていると、ツーリングイベントにも行きたいし、自分の運転で、今までモニターの中でしか見ていなかった風景も見に行きたいという強い思いのあることも伝わってくる。
 ならば、近場から少しずつテリトリーを広げていけば、何とでもなるのではないかと荒療治を仕掛け、彼女を窓の外に連れ出してしまう。
 その都度、距離を引き延ばし、行ってみたくなるような風景を目の前にぶら下げ、道順を示し、あとは自分自身で地図を頼りに走り出す。そう、まさに、Sレイドの原典になるミニツーリングが、トレーニングとして行われていたのである。
 彼女は遂に、内陸の街から太平洋の波打ち際まで自走させるに至った。それがSレイドの課題の場所その1。大勢の仲間が、彼女を誘い出すために、すれ違いを演出してくれた。
 やればできる。その意志を奮い立たせたのは、エスクードに対する信頼感も手伝ってくれたようだ。彼女のエスクード(95年式TA01W.ゴールドウイン・リミテッド)は、黒基調のツートン。彼女の愛犬“ハナ”と同じ配色というのも、ベストマッチなコンビネーションを生み出している。

 「いつまでもエスクードが似合う女性でいたいですね。エスクードのような女性でいたいのかもしれません。臨機応変に、多少の悪路でも動じずに。速く走ることは出来なくても、自分らしく着実に。やるべきことはきっちりこなす...エスクには、そんなイメージがあります」

 エスクードの似合うご婦人。
 それをどうやって表現しようか。そんなものは、主観で決めてしまおう。屋根の上にのっけてみて、絵になっていたらばっちりなのだ。
 購入当時は、ぴかぴかの新車だったエスクードも気がつけば10年選手。かわいい子犬だったハナさんも、いつの間にやら家族の中では最年長だという。ゴールドウインは、2007年、いよいよ10万kmにさしかかる。専属メカニックに支えられながら、彼女らしく、着実に。