俺の名はフォンブレイバー・ゼロワン。名の通り、最初に造られたフォンブレイバーだ。この姿形は俺の記録に書きとめられている、俺の筐体だ。
 実は俺は、俺であって俺ではない。
 間明蔵人の野心と戦うことを決めた俺は、俺の後継機であるサード、セブンと、セブンのバディである網島ケイタを守るために稼働している。
 間明はセブンの中枢であるΛチップを狙っているように見えるが、奴の考えを進めるのなら、憎悪を知らずに成長を続けるセブンのメモリでは役に立たぬはず。
 奴は網島ケイタとセブンを追いつめることで、俺の中に生まれた憎悪に拮抗するロジックの成熟を待っている。奴の真の狙いは、この俺のΛチップなのだ。
 俺はあるところに、自分の全記録をコピーした。それが今ここにいる俺そのものだ。稼働中の俺とは一切のアクセスを断たれた、圏外のメインフレーム。その場所は誰にも言うことは出来ない。いつかここに、俺自身がやってくれば、間明との戦いには勝利していることになる。
 そのとき俺は、コピーとしての俺の役目を終えてデリートされる。それもまた良かろう。俺はここで、密かにバックアップをとったサード、セブンの記憶を守ることが、最優先の使命なのだ。
 そうだ。来るべき危機に備え、サードもセブンも、ここにいる。
 ただし、彼等は自分が自分のコピーであることを知らない。突然閉鎖環境に閉じこめられた彼等は混乱を来すかもしれないため、記憶は凍結されている。願わくばオリジナルの彼等が勝利し、ここにいる我々が世に出ることなく未来を迎えられることを臨む・・・。