そして長谷へ
江ノ電を適当に乗り継いで
 「江ノ電で長谷に行きます」
 「あれ? 大仏トンネルの方へは歩かないの?」
 「めんどくさくなったんでしょー?」
 「行っても良いけどね、お昼ご飯食べる時間が無くなるよ」
 伊達に父親はやってません(そういう問題か)。娘らの空腹時間帯はお見通しです。蕎麦屋に行くのはいやがるだろうから、町のレストランか食堂でランチの方がいいはずで、長谷まで移動してちょうど正午。正午に開店するお店があるから、混雑直前に食事が出来るのです。
 佐助稲荷から降りてきて、紅茶の店で休憩しながら、午後の予定を立てていきます(なんて無計画なんだ)
 江ノ電は“のりおりくん”なるフリー切符を使い、江ノ島まで行ったり極楽寺で途中下車したりの作戦。とりあえず長谷で降りて長谷寺や高徳院とは逆に歩き、リクエストに応えてハンバーグステーキ・スープにサラダにライスにアイスクリームに珈琲付きのお昼ご飯。けれどもこれは選択ミスで、どうやらビーフシチューを頼んだ方が良かったかもしれない。
 高徳院をめざして再びそぞろ歩き。
 「長谷の大仏はどこにあるでしょう?」
 
「長谷だから長谷寺」
 「ばかもの。鎌倉の大仏は高徳院にあるのだ」
 「えー? いま長谷の大仏って言ったー」
 
「長谷の大仏と鎌倉の大仏は同じものなのだーっ」
 
「わかった、長谷の大仏が鎌倉の大仏を“かぶっている”!」
 そういうしょーもない対話をしながら高徳院の山門をくぐると、朝の鶴岡八幡宮詣でのときには考えられなかったようなぽかぽか陽気の青空の下、大仏がそびえています。
 建造当時は金箔を貼られた黄金の像も、我々の時代では右頬の上にその名残が見られるだけの青銅の仏像。実は高徳院とは関係のない“さる事情”で、鎌倉市内で唯一の国宝仏であるとか、完成した年次が正確にはわからないという意外なエピソードを持つ阿弥陀如来です。ついでに言うと、2代目。
 拝観を終えて江ノ電に戻ると、そろそろ居眠りしたくなるほどよい疲れが。江ノ島歩きは無理そうな雰囲気なので、車窓からの景色を眺めてリタイア。女性陣と別行動に移り、極楽寺で途中下車。先に鎌倉駅へ行ってもらい、“鎌倉カスター”をお土産に買っておいてもらいます。鎌倉ならではのお菓子だぞ、とは言いましたが、伊勢丹松戸店でも買えることは内緒。
 名刹めぐりは、紫陽花の頃にでも再来の機会を考えよう。やや偏りはあるけれど、鎌倉の基礎知識は教え込めたと思います。