2025年10月24日、990000キロを刻んだ。
 ゴールは見えているのにとてつもなく遠く感じる。


 芥川龍之介は言った。
 「天才とは僅かに我々と一歩を隔てたもののことである。ただこの一歩を理解するためには百里の半ばを九十九里とする超数学を知らねばならぬ」
 僕は天才ではないことは確かだが、超数学の域にたどり着いた。ただこの一歩の意味について、今更ながら理解することができない。
 九十九里が百里の半ばであるなら、990000という数字もまた1000000の半ばであると捉えねばならない。しかしここに残された道のりは、単に10000でしかない。
 にもかかわらず、何が起きるかわからないという視点においては、半ばどころではないのかもしれない。
 現に、機械は壊れる。ここまで動いてきたプロペラシャフトのジョイントが遂に壊れた。パーツがかろうじて手に入り事なきを得たが、「ここまで動いてきた」こと自体が奇跡なのかもしれず、超数学の域は一瞬にして水泡に帰すところだった。
 あとわずか、たった10000キロの道のりが、現実と超数学の狭間でのしかかってくる。