Evolution 初代エスクードのサスペンションシステム
We are deeply in the ESCUDO.

 初代エスクードが登場した当時、いわゆるクロカン車のサスペンションといえば、前後リーフリジット、もしくはフロントにウィッシュボーン&トーションバーというのが一般的であった。これは、それらがトラックから派生した事に由来する。
 そんな中登場した初代エスクードはフルフレーム構造ながら、フロントにストラット&コイルスプリング(クロカン系で初らしい)、リアにトレーリングリンクwithセンターウィッシュボーン&コイルスプリングを採用した。
 初代エスクードのキーワードに「都会派」という言葉がある。それを具現化したわけではないだろうが、一般的にストラットは乗用車に多く用いられている。
 ストラットを採用するメリットとは以下の通り。
@比較的コンパクトにできるため、車室空間(フロントの場合エンジンルーム)が広く取れる
A強度的に有利であり、アライメントの誤差が少ない
B構造が簡単で部品点数が少なくすむため、コスト・重量で有利

 リアサスペンションのトレーリングリンクwithセンターウィッシュボーンは、他に類を見ない形式である。車両中央にAアームを配置し、トレーリングリンクタイプのアクスルを吊す形でレイアウトされる。
 同じようなサスペンションを挙げるとすると、初代レンジローバーのリアサスペンションがある。
 このサスペンションのメリットは、
@比較的部品点数が少なくて済み、構造が簡単なためコストで有利
Aコンパクトに設計もでき、室内空間が広く取りやすい

 などがあるだろう。
 ただし、レンジローバーに対しAアームが短いため、車高UPには向かない、と一般的には言われている。
マクファーソンストラット式フロントサスペンション

トレーリングリンクwithセンターウィッシュボーン式
リアサスペンション
  以上のような「乗用車ライクな」サスペンションを与えられた初代エスクードであるが、そのオフロード性能はどうだろうか。結論から言えば、ノーマルでは「そこそこ」のレベルであろう。
 ノーマルで最低地上高195〜200mm、アプローチアングル・デパーチャアングルは40°ほどあるため、極端なモーグル・ロックセクションは別として、エンジン性能が許す限りの踏破性能はあるはずである。
 さらに+αを付加するとすれば、ホイールハウスに干渉しない限りの大径タイヤを履けば良い。
 ただし、これはショートボディに限った話。ロングボディのノマドは、ロングホイールベース故にランプブレイクオーバーアングルが減少するため、段差乗り越し性能は低下する。
 これを補うために車高を上げるのが一般的な手法である。その方法として、
@自由長の長いコイルスプリングに交換(いわゆるUPコイル)
Aコイルスペーサでコイルスプリングの自由長を延長

 等がある。
 @のUPコイルは現在絶版の物がほとんどであるが、スズキスポーツ、APIO等からリリースされており30〜40mmUPするのが一般的である。中には50〜80mmUPする製品も存在した。
 Aのコイルスペーサはコイルスプリングとボディ(フレーム)の間にスペーサを入れ、見せかけ上のスプリング自由長を長くするものである。ノーマルの乗り心地を変えずに車高を上げる場合に有効であり、また、@のUPコイルと併用することで更に車高を稼ぐことが出来る。

 UPコイルを装着する際は、以下の点に注意願いたい。
@ロングストロークショックアブソーバーとの併用
 エスクードのサスストロークは「短足」と言われるように、他車比短い設定となっている。特にリバウンド側(伸びる方向)のストロークが少なく、ノーマルおよびノーマルストロークのショックアブソーバーでは伸び切ってしまう可能性があり、最悪ショックアブソーバーを破損し自走できなくなる可能性がある。
 よって、UPスプリングに対応したロングストロークのショックアブソーバーを組み合わせるのである
 どうしてもノーマルストロークのショックアブソーバーしか手に入らない場合は、延長KITを使用すると良い。フロントはストラットのアッパーマウントとボディ(ストラットタワー)との間にスペーサを入れ、リアはショックアブソーバーに延長ブラケットを取り付け、ショックアブソーバーの最伸長を長くするものである。ただし、ストロークは変わらない。
 参考までにこのコイルスペーサは、ワンオフで作ってしまう強者もいる。
Aアライメントの補正
 これは主にフロントであるが、自由長の長いコイルスプリングに変更した場合、アライメントの変化が起きる。特にキャンバーの変化が大きくポジティブキャンバーになる(いわゆる逆ハの字)。
 そのままでも普通には走行できるが、操縦安定性はかなり変わってくる上、タイヤが片減り(外側の減りが早い)するため経済的にも好ましくない。
 また、極端なポジキャンはストラットに負担をかけることとなり、早期に油漏れに至る事もある。
 補正の方法として以下がある。
@取り付けボルトをマジックキャンバーに変更
 カム機構の付いたボルトで、ストラットの上側取り付けボルトと交換することにより、約±3°の補正が可能。
Aアッパーマウントをピロアッパーマウントに変更
 本来はレース車両等に使用し、ハンドリング性能を向上させるものであるが、ストラットの上側取り付け(ロッド)位置を変更できる構造になっているため、キャンバー補正が可能となる。
 また、ノーマルのマウント(ゴム)からピロボール(メタル)になるため、乗り心地は固くなる。
Bロアアームの変更
 ロアアームを長くする事により、ストラット下側の取り付けを外に出し、キャンバー補正を行う。(ある意味ピロアッパーマウントと同じ考え方)
Cストラット取り付け穴の長穴化
 ナックルの下側取り付け穴を長穴に加工することにより、マジックキャンバーと同じ効果を得る事ができる。一番コストはかからないがリスクはある。
 その他、足回りのパーツに手を入れる方法はいくらでもあるが、コスト的な負担が大きいのでここでの紹介は割愛する。フレームとボディの間にスペーサを入れる、いわゆるボディリフトと言う方法もあるが、これは車高(全高)は上がるが最低地上高は変わらないのであしからず。
 キャンバー補正は30mmUPぐらいまでは必要ないと言う説もあるが、筆者は30mmUPでタイヤが片減りし、操安性変化(オーバーステア傾向)も体験したため、補正を実施している。
 なお、アライメント測定・補正は専門のショップ等で実施することをお勧めする。
 さて、ここから先は筆者の持論が展開するので参考程度として欲しいが、エスクードのサスペンションは一般的に見て車高を変化させるには向かない構造なのである。
 フロントサスペンションのストラット構造は先記した通り、少し車高を変えるだけでアライメントが狂い、要らぬ手間をかけねばならない。それは各パーツで補正できるとしても、見えないところに負担がかかるのは避けられない。(キングピン軸の変化によるハンドリングへの影響等々)
 そして最大の欠点(?)と言うべき所がストラットの取り付けにある。実際に足回りの交換作業を行ったことがある方は、思い出して貰いたい。
 見た目にはボディと接合されているのでわかりにくいかもしれないが、ストラットの上側取り付け(マウント)はボディに取り付けられている様に見える(実際には共締めされている)
 しかし、このマウントはストラットタワーに取り付いており、そのストラットタワーはフレームから生えているのである。
 感の良い方ならもうお気づきであろう、そう、剛性がないのである。特に横方向の剛性が不足していると考えられる。
 ボディに接合されているから良いのでは?と思われるかもしれないが、そのボディ側はエンジンルームであり、上側はボンネットが有れど基本オープン構造なので剛体とは言い難い。
 最近の車のようにストラットタワーがバルクヘッドと結合していればまだ良いが、そこは基本設計が20年前の車。コイルスプリングがストラットと別立てになっているので、無用な横荷重をストラットが受けないのがまだ救いである。
 その証拠(?)にワイドボディ(フレーム)化されたV6系ではストラットタワーバーが標準装着されるようになった。ただこのタワーバーもおまけ程度でしかなく、2000年には構造不適切でリコールとなっている。
 以上より、足回りを弄る、弄らないに関係なく先ずはタワーバーの装着をお勧めする。

 次に、リアサスペンションであるが冒頭に書いたとおり、トレーリングリンクwithセンターウィッシュボーンと言う他に類を見ない独特の構造である。
 車体中央部のフレームに取り付くAアームが支点となり、ピロボールを介してリアアクスルが「やじろべい」の様に取り付く形となる(重りとなる部分はタイヤか?)。
 トレーリングアーム付きのトーションビームタイプの改良版とも言える構造であるが、Aアーム(+ピロボール)を追加したことにより、左右逆位相の車輪の上下動に対して自由度を与えている。(その反面、横方向の入力には剛性不足である)
 その結果、ノーマルでのホイールストロークは160mmを確保している。
 この状態で、コイルにより車高を上げた場合どうなるか?
 トレーリングアームは車軸の位置決めを主目的としているので、特に影響は無いだろう。
 おそらくネックとなるのがAアームの先端に付いているピロボールではないだろうか。なぜなら、車高が上がるにつれノーマルとは違う揺動角になるため、耐久性の低下は免れないと思われる。
 Aアーム自身も上下動はするので、ピロボールの摩耗が早期に起きるとは考えにくいが、永年つきあうのであれば、各ブッシュとともにオーバーホールの対象にしておくのが無難であろう。
 いずれにせよ、「ほどほど」が一番良いのである。

Egress  Next