Evolution H27A
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 ■H27Aというエンジン
 グランドエスクードに搭載されたH27Aというエンジンは、一言で表せば「高級車になりきれなかったじゃじゃ馬」だと感じております。
 このエンジンの初期のコンセプトは、5人乗りのエスクードをストレッチさせたボディーを軽快に走らせる為、当時のスズキ最大のエンジンH25A(2439cc)をボアアップし開発されました。

 総排気量2736cc、最高出力177ps/最大トルク24.7kg-mを搾りだすH27A(当時)は、同じV6型搭載モデルであるTD62Wより220kg重たいボディーをブン回すには十分な出力でしたが、少ないアクセル開放度で街中を流すシチュエーションなど、トルクフルな走りをするには最大トルク発生回転域が高く、エンジンの特性と高級感で売り出したグランドエスクードという車のコンセプトに、若干のズレを感じる結果になったのは、非常に残念なところです。

 特に、ライトクロカンというカテゴリーより突出したグランドエスクードのライバル、ランドクルーザープラドやパジェロ等のディーゼル車もしくはレシプロでも、大排気量モデルで高級感=大トルクといった大型SUVの牙城を切り崩すにあたり、H27Aというエンジンはあまりにも特性が違うものだったと思われます。
 ■初期型のH27A
 では、当時のH27Aとはどんな特性のエンジンかというと、ショートストロークの高回転型エンジン。TD62Wに搭載されていたH25Aとストローク長は変わらず、ボアアップのみで出力拡大したH27Aは、街中を少ないアクセルでゆったりと流す高級車ではなく、アクセルをグイと踏み込んで一気にトップスピードまで持っていき、車速がのったらトルクで走る様なスポーツチックな走りが似合うエンジンでした。

 他のV型エンジンと比較しても、直列4気筒の様なレスポンスのよさと、6気筒の中〜高速からの伸びを併せ持つH27Aは、スポーツエンジンとして申し分ない能力とポテンシャルを秘めており、レゾネーターやエアクリーナーBOXの撤去、マフラーなどの排気デバイスの交換等、吸気〜排気のファインチューンで、より走りを楽しめる車へと変貌します。特にレゾネーターを撤去した後のV6加速音は、水平対抗をこよなく愛するスバリスト達に通ずるものがあるのではないでしょうか。

 H27Aはその後、4型のグランドエスクードに搭載される際に、可変吸気システムを採用し出力向上(177ps→184ps)がはかられましたが、その際、オートマチックの5速化と合わせ、最大トルクの発生回転数の引き下げがされた事からも、グランドエスクードという車のイメージとH27Aというエンジンの特性付けの変化があった事が容易に伺えます。


 ■3型→4型へ(可変吸気デバイス、5速ATの恩恵)
 4型のグランドエスクードに搭載されたH27Aは、オートマチックの5速化と合わせ、低〜中速のトルク感が非常に良い車になりました。3300rpmで最大トルク25.5kg-mを発生させるエンジン、2000〜3000rpmの少ないアクセル開放度でトントンと小刻みにシフトアップしていくオートマチックの5速化が、最初に目指した高級車であるグランドエスクードのイメージではなかったのかと感じております。
 ただし、それは同時に、5速ロックアップ状態でのH27Aの限界(トルク痩せ)を証明する事にもなりました。


 ■そして3代目エスクードへ
 グランドエスクードで一旦の終焉を迎えたH27Aは、3代目エスクードに搭載される事になります。多人数乗りの高級車であるグランドエスクードと違い、エスクードはスズキのライトクロカンのフラッグシップモデル。4型で培った可変吸気システムに加え、本来のH27Aの特性を活かした高回転型エンジンへと特性を戻し、スポーツチックな走りが出来る3代目エスクードへと進化を遂げました。

 H27Aというエンジンは、20年という長きに渡るエスクード史の中のほんの一握りの出来事でしかありませんが、その時代時代で着実にコアなユーザーを引きつけ、魅了していったのではないでしょうか?
 私は今日もグランドエスクードを駆り、ワインディングを走ります。すれ違ったり同じ車線で後ろを走っている3代目エスクードとは当然、姿・形もちがうのですが、サイドのフェンダーにレイアウトされたV6エンブレムを見かける度に、H27Aというエンジンに、強いてはエスクードという車に思いを馳せる事が出来るのかもしれません。

written by Mr.ZUICO.
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