Evaluation 
We are deeply in the ESCUDO.
骨太のSUV
2008年式 TDB4W


嵐田雷蔵

 ライトクロカンと呼ばれ、誕生した時代から20年。2倍の排気量と3倍弱の最大出力を持つに至ったエスクード。よもやこの車が3000ccを越えたモデルになるとは、8バルブのテンロクショートに乗っていた頃、想像も出来ませんでした。
 グランドエスクードを別格にすれば、2代目までのモデルはコンパクトクラスとして確立し、特に初代は“小さな車体に大きなエンジン”を搭載した後年モデルのちょっとしたホット化と、それを頑なによしとしなかったテンロクシリーズのライトウエイトさが魅力でした。
 3.2XSは、大きくなった車体に相応のエンジンを積み込んだ、逆のアプローチによって生まれていますが、走らせてみると愚鈍ではなく、しかし軽々しいわけでもない。カタチを見れば一目瞭然ですが、本格的オフロード性能と言っても、それはクロスカントリータイプからは遠ざかった、SUVとしての領域を示すものだと言えるでしょう。そこを認めるところから、このモデルと向かい合うことが初めて可能になります。
 豪華ではないけれど、飾り立てもしないシンプルさ。でも歴代と比べれば万人が納得できる最低限の質感を身に纏っています。縦置きのエンジンとセンターデフ式フルタイム4WD、ローレンジに切り替えの利くトランスファー。それらが、現在のエスクードにおける、エスクードらしさ。真面目に取り組んで開発されたと思います。おそらくこのような温故知新の中に古き良きものへのこだわりを込めて作られるエスクードは、時代の流れから考えても、最後の世代になるのではないでしょうか。
 そういった部分にニーズを抱く人々には、おすすめできるモデルです。辛辣に言えば、クロスカントリーレベルのオフロード性能を求めるには、こつこつと改良を重ねる必要があり、それを楽しめる人でなければ持て余すし、ハードクロカンに使おうとは思わない方が無難。はたまた、従来のミニバンのような使い道を考えている人には、ユーティリティーがもの足りません。ましてやこの手の車には、大径ホイールで薄っぺらなタイヤを履かせても、似合いません(そこは主観だから一概に決めつけられないけれど)
 フラッグシップであっても、セールスリーダーではない。主力を2.4XGに委ねている分、このグレードに存在価値があるのかどうかを聞かれますが、どっしりとした安定感と、余裕のあるパワー・トルクは、長距離ツーリングにおいてはXGを凌駕しています。クルーズコントロールを使いこなせば、意外にも燃費の良い走りを見せてくれます。
 20年も経っているのですから、大人っぽい車になっているのも、ある意味当然なのでしょう。先へ先へとレーンの隙間を狙って飛び込んでいくのではなく、速いクルマ、せっかちなクルマには目もくれずに悠然と走って、それでいて目的地には予定よりも早く到着できる。そういう使い方が似合う車になっています。


   

Egress