TD54/94W ライトクロカンの血脈と底力 | ||||||
さてSUVとして登場した3代目。そのSUVという実は曖昧模糊としたカテゴリーの中で、メディアをして分類しにくい性格を、エスクードが漂わせているのは、先代までのライトクロスカントリー(この“ライト”も、軽量級なのかカルイなのか、なんとなくうやむやになっている)性能を、メカニカルな方式を変えつつも継承していることにある。このライトなクロカン性能は、他社の競合SUVにぶつけたとき、スズキよりも大手メーカーのそれらが揺らいでしまう底力を持ち合わせている。 クロカンステージに持ち込んでしまえば、ライバルたちの走行性能とは一枚上手の素性を見せるエスクードに対して、ライバルたちは「より日常にフィットした走行環境」に引き戻して、総合性能で逆襲に転じるのである。 確かに、モーグル地形や沼地、ヒルクライムやマウンテンといったステージは、非日常であって、山深い廃道かオフロードコースでもなければ、体験することはほとんど無い。だからエスクードをライバルたちと、その部分でだけ水を空けようという考え方も、あまり賢いものではない。しかし、3代目のエスクードがそれらの性能を秘めていることに、何も否定する必然はない。 ただ謙虚であればいいと思うのだ。 |
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彼等のアタックを目の当たりにして、SUVでありながらライトクロカンでもあるエスクードの本来の顔を、あらためて知ることとなった。独立懸架のサスペンションには、リジッドと比較しての強度面での不安があるものの、なかなかどうして、動きがいい。これはだめか? と思うようなコブへのヒットがあっても、サイドシル部分にあたるドア下部は、土のモーグルではそれほどダメージを及ぼさない。 下回りについては、アンダーカバーの剥離などがあったが、ESPを持たないXGが、ロック以外の一通りのセクションをクリアしてきた。 XSはさらに果敢で、ランクル70がデフロック状態で抜けられなかったトラクションデバイス搭載車用セクション(意図的に対角線スタックを誘発させる、泥の地形)を、ラインの見誤りで前進、後退は繰り返したものの、きっちりと走り抜けている。XSがスタックしたのはただ一度だけ。ATタイヤが泥詰まりでパターンを埋められてしまったことが要因。それもあと少しで脱出できたかもしれない。 エスクードは、良くも悪くもスズキというメーカーが開発した4WDだ。大手メーカーのラグジュアリーなSUVとは異なる。そのクルマへの質的な豪華さという期待を裏切られることは、当然起こりうる。だがこれだけの走破性は、ミニバンやステーションワゴンを出自とするSUVには絶対に不可能なのだ。重ねて言えば、良くも悪くも、クロカンの系譜を持つSUV。彼等は小さなクレームを気にするよりも、クルマを壊さないための対策をどうするかの話題を、楽しそうに繰り広げていた。 |
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