2011年シーズン 本領と転換に直面する両者

 teamWESTWINのエスクードは以前問題が山積みのまま、2011年をシーズンインした。昨年度はТDAでチャンピオンを獲得したのだから、問題山積とは意外なことだが、おそらくこれをパイロットする後藤誠司選手の「さらに上を」という貪欲さによるものと思われる。
 根が素直な後藤選手、看板を背負って走る責任感もあろう。貪欲さが出るのは悪いことではない。昨シーズンを経ての彼の走りを、島監督に尋ねてみた。

 「石の上にも3年ですね。ある程度操れてきました。相変わらず、ハンドルを抉る癖と早切りの癖が、たまに出ますが、これが出ない時は抜群に速いですよ!」

 練習では、コーナーでの立ち上がり時に重点を置き、進行方向にステアリングをを素早く戻す行動に専念させたという。舵角が出た状態で生じるフロントタイヤの流れや、その影響となる抵抗を軽減させる。この成果がタイムを削り出している。
 3月に行われたTDA2011年第一戦で、パジェロ3500Jトップの廣瀬選手と対決し、敗退していた後藤選手だが、実はこの練習走行時の計測では、廣瀬選手のタイムを上回る結果をおさめた。島監督はこの結果を見ながら、こう評価する。

 「まだまだ甘い走りですが、今回、廣瀬君とはほぼ互角の実力でまみえていると思います。今後組み替える足回りに変更したとき、きちんと操れなければ、宝の持ち腐れになりますので、後藤君には練習あるのみと言っています」

 一方、後藤選手自身は、

 「4H側のファイナルを落としたいんですよ。そういうキットは出ていないんでしょうか」

 彼はこれまで4Lのトルクを用いた走りを続けてきた。そのためアンダーステア傾向が強く持続されるので、もう少し中間層のギア比を欲しがっている。調べてみたところ、彼のエスクードは入手した時点で1600CCのエスクードのミッションが組まれていた。ならばノーマルのТA51Wよりも4H側のファイナルは落とされているはずだが、どの世代のミッションなのかが判明していない。できれば3型くらいのものを手に入れたいところだ。
 もう一つの課題としては、そのまま回し続けるためにエンジンもオイルも熱ダレしている。熱抜き対策か、オイルクーラーの増設が必要のようだ。

 さてパジェロミニを操る川添哲郎選手だが、車両の方はこれ以上のパワーアップを望むと、全体のバランスが取れない状態までになってきた。競技車一本へ特化していくならば、まだ詰める箇所は多々あると島監督は見ており、決断が下されれば、最大のウイークポイントとなっているトレッドの狭さの解消に向け、パジェロJrの足回りにオーバーフェンダーという形が考えられる。

 「2台の立ち上がりを見れば一目瞭然ですが、総合的にみても後藤君のエスクードが、まだまだ速いでしょう。今回、川添君もエスクードを操ってみて、その事実が痛いほど実感したようで、彼らしくない弱音を吐いていました」

 TDAでは今までクレバーさと先読み能力でリカバリー以上の駆け引きをこなしてきた川添選手だが、他のエントラントも確実に力をつけているというし、なによりパジェロ乗りの間では、打倒川添というムードも強まっているという。各地の競技に、パジェロミニのエントリーが見られるようになってきたことを見ても、川添選手の戦いは転機を迎えるのかもしれない。割り切って戦闘力のある車両にステップを上げるか、パジェロミニで納得できるリザルトをたたき出してから決断するか。それは彼次第だ。
 
そしてやって来た新しい素材
 6月上旬、島監督から「買っちゃいましたよ」という連絡が入ってきた。無い無いと探しながら後藤選手のエスクードを手に入れたころに比べると、月に1台程度のオークション流通が出るようになったというが、これはまた電撃な展開だ。
 「この個体も4AТですが、状態は全体的に後藤君のよりも良い」
 「これをどうしようというの? ひょっとして川添選手用?」
 もしもその通りになったら、これはすごいことになる。
 「その線も考慮に入れていますが、乗るかどうかは彼の判断だから」
 「彼が意地を通してパジェロミニを選択した場合はどうなるの?」
 
「我々にはダートトライアル以外に、耐久レースもあるんですよ。01W、31Wをこれまで投入したけれど、投入したのは話題の域に終わってしまった。それに、私自身が耐久レースに忘れ物をしたままですし」
 どのように展開しても、やはり話題には事欠かない今シーズンになりそうだ。
ESCLEV toppageへ - Go index -