きっかけは霙が買ってきた常陸太田のくじら焼き。鯨と言えば友人のじにーさんが大のクジラフリークで、「東京と四国にもありますよ」と教えてくれた。四国は無理でも東京ならば! 

 その店は昭島市にあるという。圏央道でどうにかなる。
 それに、近場の埼玉県日高市に、八高線と川越線のターミナル駅があって、この駅舎がかつてのつくばーど基地最寄り駅だった建物によく似ていると聞いていたので、さらに隣の飯能市に仕事を作り、まず高麗川駅探訪から始めたのだが・・・
 高麗川駅は昨年改築されて橋上化されてしまっていた!
 いきなり出ばなをくじかれ、日高のスチルと飯能の仕事先スチルはすべてボツ。さっさと東京の都境を越えて立川から昭島市に移動する。
 知識不足でなぜ昭島でクジラなのかを知らなかった。このくじら焼の店以外にも、クジラ肉料理を振舞う居酒屋があるようだ。
 遡ること1961年、多摩川のほとりで体長約13mほどある約200万年前の化石が出土し、これが現代でも生息しているコククジラによく似ていたことから、新種としてアキシマクジラの名が付けられ、町政時代から鯨がこの町のマスコットなのだそうだ。
 ことし10年目になるという「にこにこ本舗」は、2年前からくじら焼を始めており、常陸太田のものよりは新しい。注文順に焼き始めるという話なので待ちが長くなりそう。ぷらすBLUEを近くの時間貸し駐車場に預けて、待ち時間に昼食を取ろうと何軒かの軒先を眺めながら、井之頭五郎さんみたいな気分で「にこにこ本舗」にたどり着くと
 「ランチ メインと総菜とスープ」と書かれた看板があるではないか。これも勘違いしていたのだが、同店はもともと食堂なのだ。

 

 昼どきを過ぎていたせいか、他の客もなく、ここがいいなという席につくことができた。1960年代に使われていた小学校の机と椅子だ。かなり年季が入っている。ランチは四種類のメイン料理から一つ選ぶのだが、時折変わるのだろう、献立表は壁の黒板にチョークで書かれている。すべて500円というのはありがたい値段だが、料理以外に半分凍らせた羊羹やホットレモネードも出してもらえた。近所にあったら日参したくなる。
 肝心のくじら焼もなかなか凝っている。定番のあずきをはじめ、そのあずきを草餅でくるんだ亜種、さらには牛肉のそぼろ煮という新種がある。これは迷っていられない。三種すべてを2個ずつ注文し、料理が出てくるまで、店主の手作業を拝見する。
 「焼き型は特注で、頼んでから4カ月待たされましたよ。注文品だから沢山は出回っていないはずです。その、茨城の鯨と同じですか? 似ていますか?」
 基本的なフォルムはかなり似ている。胸鰭のあたりが違うような気もする。常陸太田の型が経年変化しているからかもしれない。
 歳を取って胃袋も小さくなっているせいか、ランチの料理はさほどのボリュームでないと安心していたのに、食べきるのが大変だった。いやなに、おいしい料理だから食べつくしたけれど。
 駅前の駐車場はランチよりも安く済んだ。23区が高すぎるのだ。なんでもかんでも機能を都心に置いておくべきではない。
 天気もよく暖かい日より。帰路はわざと迷子になろうと、道路標識が出てきたら曲がる走らせ方でカーナビゲーションも見ない。結果、都心には突入せず関越道の所沢インターに行きついた。鶴ヶ島で圏央道に乗り換え、4車線化の進む茨城区間を偵察しながら土浦で給油し、帰宅についた。