「雷蔵さん、幌車貸して」
 SSC出版の二階堂裕さんから依頼され、ぷらすBLUEを厚木に持って行ってみれば、2018年1月発行のスーパースージー誌上で「エスクード誕生30年」という企画を立てるのだという。
 いやぁ、ようやくここまで来たね。同誌にかかわって何年目になるだろうか。
 といって僕がしゃしゃり出ても面白くないだろうから、アシスタントという名目で霙を同行させ、クロカン走行の初披露とした。
 今こそ腕立て伏せ特訓の成果を見せるときだ!(関係あるのか?)
 
 猿ヶ島フィールドはドライコンディション。初心者が走るうえでは好条件。
 とはいっても壊されては帰れなくなるので、撮影はフィールド入り口の緩めの砂利の斜面。
 2段目の上がり口だけは下手を打つと泥除けの1枚2枚は引きちぎるかもしれないが、よくよく考えてみたらぷらすBLUEには泥除けが付いていなかった。
 砂利は浮いているが、加減がわかればヒルクライム自体はそう難しくはない。

 「えっ、これ登っちゃっていいんですか」
 
「いいんだよー。私の後についてきなさい」

 二階堂さんの、いい加減リアサスが抜けきったTD51Wに続いて、霙が登坂する。
 路面の状態も良いが、さすが軽量のコンバーチブル。途中でアクセルを抜いて停止してしまっても易々と二段の斜面をクリアする。
 おっかなびっくりで挑んでもうまくいけば気分が変わるらしく、これまた「ひゃー」とか言いながら、ディレクターの古瀬さんの誘導でヒルダウン。
 あとはもう自力で登り降りを繰り返す。

 「よしよし。筋がいいからモーグルを教えてあげよう」


 おいっ、脈絡もなく初級オフロードスクールかよ、撮影はどうなるんだよ? という声など届かないところまで、どんどん進んでしまうが、撮影の大津さんが先回りしてカメラを構える。
 でもきっと、掲載記事はクールなテキストになるのだろう。霙のシーンが採用されるかどうかは定かではない。