関東内陸部の山では雪だという4月の始まり。天狗の森のソメイヨシノは見ごろを迎えているが、花見をするには肌寒く、やっぱりつくばーどと花見は我慢大会のジンクスが付いて回る。

 それでもこの日の朝に行った偵察時は、本当に午後から雨なのか? という薄日のさす天候で、カメラの設定とフィルターに頼れば空だって色が出ていた。
 肌寒いと言ってもコートを羽織るほどではない。花見をするにはまあまあなコンディションなのである。が、どこからの反応もなかったので場所取りは行わずに下山してきた。念のために買っておいた冷凍食品のピザは、昼飯に回すことにしよう。
 という朝の時間が少し過ぎた頃、青影さんから電話があり、あと30分ほどで到着するとの嬉しい連絡。2人いればイベントは正式成立する。花見の場所取りを怠ったけれど、曇天になってしまったし降ってきたらまだ炬燵の出ている茶の間に逃げ込めるから、前庭のいつものテーブルに店を拡げた。


 我が家以外の初代のエスクードを目にすると、ほっとする。本当に巷で初代モデルと出会うケースは激減した。
 青影さんのエスクードはBLUEらすかると同型であり、初代の中でも特に稀少。それを眺めながら花見ならぬ茶のみができることは実にありがたい。
 茶飲み、と言っちゃうところがじじくさいけれど、もうお互い還暦過ぎてるし。
 青影さんは「ことしは花の勢いが弱いかなあ」と言う。花の咲く密度が、なんとなく薄まっている。天狗の森について言えば、今の桜はこの半世紀で一度植え替えられたが、それでももう30年近く過ぎている。
 話は花よりエスクードに展開する。
 部品供給が滞ってきた整備の話と、足回りのショックとコイルの話、旅の話へと座は盛り上がっていく。青影さんは昔、海岸線沿いに北上して東北一周をしたそうで、その機会をもう一度と狙っているという。TD61Wは長距離ツアラーと言ってもいいので、ぜひとも実現させてほしい。
 「コロナ禍でいろんなものが変わってしまったけど、また大勢で集まりたいよね」
 「第7波とやらが要警戒ですが、10月に来年用の素材づくりで大掛かりなのをやりますから」
 そんな対話をさせていただき、青影さんは雨が降り出したところで帰路につかれた。
 そのあともう一度、天狗の森に登ってみる。局地的で一時的に降るこの雨は花散らしにはならないと思われるが、東京は土砂降りらしい。