2004年からリピーターとなっている新潟県妙高市への旅は、ここ数回イベントの枠から外れた過ごし方となってしまった。
 コロナ禍あとのイベント復帰については、あらためて意見を伺おうと思う傍ら、途絶えさせるのもいやなので独りつくばーどを敢行している。
 5月下旬、まだ杉野沢から小谷村へ抜ける林道は残雪により封鎖中。宴会行事もない。それで何をやってくればいいんだとなると、妙高行きのきっかけとなったとん汁を食いに行くことが筆頭なのだが、初日に7分の差で休憩に入られてしまい、定食もとんそばも注文できず。
 しかし翌日に持ち越すなどやってられるかと、可能だという持ち帰りに切り替え、今年の目標の一つはクリアした。


 まあまあ店の方針だから泣くしかないのだが、このあと立ち寄ったクレープとガレットの店では、
 「お客様、去年の今頃も来てくださいましたよね」
 この一言には驚いたし、うれしくなってしまった。
 どえらい違いだ。
 もう気分は来年から主たる行事をここのガレットに換えてしまうぞの有頂天。
 そして杉野沢の定宿は例によって貸し切りなるも、オーナーご家族の手厚いもてなしで食事も美味いし風呂もでかいし布団もふかふかのありがたい二泊三日が始まる。
 代変わりし宿を切り盛りする長男さんは、妹さんと新たにキッチンカーを稼働している。
 この週末は高田のお寺の縁日に出店するというので、日曜日に訪ねてみることとし、二日目は富山県に走る。
 と、簡単に出発してしまったが富山県の何処へ行けばいいのよ?
 相変わらずの行き当たりばったりで、そんなもん富山県に入った最初のパーキングエリアに観光パンフレットの一つもあるだろうよと思ったら、そこまでがネクスコ東日本の管理で、置いてあったのはハイウエイウォーカー東日本版であるばかりか、信州のサービスエリアね歩き・・・
 逆方向じゃねーかっ

   
 
 新潟から移動した北陸道富山県ふたつめ、サービスエリアとしては最初の施設からが、ネクスコ中日本の管理。どうにかパンフレットを手に入れるが富山って言うとほぼ黒部立山やら宇奈月温泉やらで、そこまで堪能するには近場に宿泊しなくてはならない。
 よくよくガイドを読み込んでいき、高岡市に古い街並みが保存されていることを知る。
 1600年代前期、高岡に隠居していた加賀前田家二代当主の利長が各地から鋳物師を呼び寄せ築いたのが、今なお続く鋳物職人の街、「金屋町」だそうだ。高岡はこの時代に大火に見舞われているが、金屋町は焼失を免れ、千本格子の家並みが建ち並ぶ。
 そぞろ歩きながら通りを渡ると、今度は土蔵造りや明治期の煉瓦式建造物が林立する「山町筋」に至る。こちら側は火災の影響によって土蔵が再建されていったという、米の集積商業地だという。
 近代文化の面では路面電車も走る高岡では、意外な発見ができた。

 
 
 大火と言えば2016年の糸魚川大火も大きな被害を出したが、その災害が夢のように復興を遂げている。大火の前年に偶然入った老舗の蕎麦屋は、富山の地魚を諦めてでも寄っていきたいところだったので、一路新潟県へ戻る。
 以前はひょうたんの形をした三段重ねの器に蕎麦と一品とサラダを盛り合わせたジオサイト丼という献立があったが、これが品書きから消えているのは残念。天ざると厚焼き玉子を注文し、それが配膳されてきたときにジオサイト丼のことを聞いたら、
 「ああ、今はお好み丼に名前を変えていまして」
 やってたのかひょうたんの器!
 じゃあまた来るしかない。
 と蕎麦を一口すすり天ぷらをかじっった後に写真を撮り忘れていて、家内の天ぷらを借りて撮り直し。日の高いうちに妙高へ戻る。
 ただ宿のオーナーご家族はキッチンカーの出店でまだ帰宅していないはずだと、杉野沢隣の赤倉にて時間つぶしにかかる。
 誰がどこからどう見てもラーメン屋。そこで大胆不敵にアイスコーヒーだのコーラだのケーキセットを頼んでしまうのだが、メニューにあるんだから頼めるのである。

 
 浄土真宗の浄興寺派本山であるという浄興寺は、元は茨城県笠間市に建立された寺院であったはずだが、これが戦火で焼け落ち、長野県長野市に移されたものの、これも川中島合戦で壊滅して新潟県上越市高田にて再建されたのだという
 本院だけに周辺は寺町となって数々の寺院塔頭が建ち並ぶ。
 その浄興寺境内と裏参道を主体に、定期的に縁日が催される。
 「空飛ブウサギのキッチンカー」は、イメージカラーのオレンジがひと際目を引く。商品オーダーにやって来るお客もなかなか多い。
 あの定宿の味だもの、美味しくないわけがない。
 ましてや素材の仕込みで多忙なときにのこのこと泊りに行ってしまう不良客なだけに、夜遅くまで準備する二代目の背中を見てしまったら、冷やかしに行かないわけにはいかない(って、冷やかしなのかよ)
 バターチキンカレー、ベジナスカレー、ロコモコ丼、ハンバーガー各種、ポテトフライやスイーツなど目移りする中、ハンバーガーとエビかつバーガー、ロコモコ丼を買い求め、帰路の途上バーガーをいただく。小さめのバンズだが子供や女性にはちょうどいい。パティは手ごね、野菜類も妙高の地ものと、手作り感と熱意がこもっている。
 これらを仕込みながら、二日間にわたって我々の夕食の献立も変えながら出してくれたことを思うと、やっぱりありがたい。
 昼頃に高田を出発し、走りながらの昼食。そのおかげで明るいうちに帰宅できた。
 毎年何をすればいいのやらと出かけて行きながら、おおむね面白おかしい旅を楽しむことができた。そろそろつくばーど行事に戻したいと切望する。