霙が「古河と石橋に、福田パンと同じようなスタイルのコッペパン専門店がありますよ」と、美味しそうな話を持ちかけてきた。
 福田パンとは、盛岡市にあるコッペパンの店(栃木県にも同様の同名店があるそうだが双方因果関係はない)のことだ。盛岡のソウルフードとも呼ばれている福田パンと同じように、注文後に中身を盛り付けサンドするスタイルらしい。
 「仙台から盛岡へ買いに行くのも大変だったけど、これが本当ならつくばーど基地からたったの70キロ!」
 という具合で、急遽巻き込み型買い出しなつくばーどが始まる。

 「コッペパン専門店JOURNEY 石橋店」は、まさしくふわふわのコッペパンに、掲げられているジャム類や総菜を注文してサンドしてもらう、あの方式だった。茨城県古河市に誕生し、続けて栃木県下野市に店舗を進出させている。石橋店は昨年のオープンだという。
 栃木でパン屋と言ったらクロさんのテリトリー。彼女に一言告げておかなかったら叱られる(叱られないって)と声をかけ、SSSレイドの活動阻止をもくろみ新月・風花夫妻にも「来い」と言い放つ横暴極まりないつくばーどである。
 惣菜系に関しては、福田パンを上回るバリエーション。パン自体は福田パンより少し小さいが、食べやすいサイズで盛岡では2本で充分のところが、この店のものは3本は楽勝だ。

 「まさかこれだけのために呼び出されたのか我々は?」
 「これをどこかの公園とかで食べるとか?」
 「だーいじょうぶ。パンはお昼ご飯以降に持ち越してもらって、これからかき氷を食いに行くのだ」

 まあこんな調子である。が、このかき氷のお店もインターネットで見つけたもので、クロさんに事前に下見に出てもらっている。これがコッペパンの店以上の収穫となるのだ。


 「ジャックと豆の木」(栃木県下野市箕輪416-3)は、会社勤めを定年退職された三浦良実さんが、3年前に開業したかき氷のみのカフェである。下野市の空き家活用制度を活用して賃貸した一軒家に、単身赴任で定住し店を切り盛りされている。

 「藪の中から建物を開墾発掘するところから始めました。開業当初は、庭先に35mのポプラの木があって、これに藤が絡まっていたんですよ。それが店の名前の由来なのですが、少し前に大風にあおられて折れてしまいました」

 現在は店内に飾られた写真と、お店の看板代わりの暖簾や幕に名残を見ることができる。
 それにしても、ゴールデンウイークから秋彼岸までの期間限定店舗で、かき氷しか出てこないというのは冒険だ。これはいたずらに手を広げて商売が雑になることを避け、10月の声を聞くと暑い日であっても人の食欲からかき氷は無くなるという経験によるものだそうだ。

 

 様々なフレーバーが用意されている。
 目を見張る・・・というより舌が躍ったのは、滑らかな氷の感触と、それぞれ味わいの深いシロップの出来栄え。天然氷ではない。ただし氷の温度管理を慎重に見極め、丁寧な削りをされる。シロップは既製品ではなく、原料を濃縮製造する方法で発注しているそうだ。
 昨今のかき氷は度を超えたトッピングと相応の単価が目立つ。ところが三浦さんのかき氷は、アイスクリームや練乳などを追加しても最大600円を上回らない。
 王道なのである。
 
 「お子さんにはブルーハワイとかメロン味が好評なので、この2つだけは妥協してしまいましたが、会社勤めを辞めてやりたいことをやるなら、こだわりたいのです」

 霙の一言から行き当たりばったりで設営した下野のつくばーどミーティングだったけれど、久しぶりに素敵な出会いを引き当てることができた。
 なお、新月夫妻はこの前日に、SSSレイドに走っていたらしい。
 ちくしょー、また新しいの出さなくちゃならねー。