大気の逆転層内に位置するつくばーど基地でも、庭先の車のフロントグラスが凍り付いた。
 筑波山の逆転層はそれよりも高い標高にあるが、そこを突き抜けていけばダート上の水たまりも初凍りしていた。
 前夜の雪は西から吹く風に乗って来たらしい。山の西側に回り込むと、雪の名残がみられる。
 いや、これからの季節の前哨戦のようなものか。
 それにしても北西側の山肌が「はげ山状態」という伐採の跡。
 森の中を進んでいた林道の一部分が明媚な景色に・・・というよりガードレールなど無いのでオーバーランしたら転落する(もっともそんなのはよほどのへたくそ)
 よもや国立競技場に使用する木材のために切り出されたんじゃないだろうな? それならそれでひどい話だと思う。
 筑波の北西側斜面は、決して安定した地山ではないから。
 しかし北東側は変わらず森の中を往くルートが存続している。変化があったとすれば、徒歩トレッキングの人が増えたことか。
 数年前には徒歩の人など見かけることもなかった。その変化を疎ましく思うことはないが、だからこそ林道走行速度には細心の注意を払わねばならない。
 筑波山中のレジャー施設も増えており、このルートをめぐる際に集合地点として使わせてもらっていた自由駐車場も、自由には停められなくなっていた。
 今回、山麓から少し離れた町の喫茶店を使わせていただいた。
 偶然にもその店のマダムは、僕の高校時代の後輩で家内の同級生のことを知っている人だった。
 だが家内とも無二の親友であった彼女は、嫁ぎ先で亡くなっている。それから10年以上経って、彼女の人柄を知る第三者に巡り合えたことは少しうれしかった。

 午前中の筑波山周回ルートを走り終え、北稜線林道に移動する。
 さすがの尾根筋。筑波山中とは風の冷たさがまるで違う。そして稜線林道と言いながらも西側斜面に切り開かれたルートであるため、ほぼ1日日差しが届かず、凍結した区間も現れる。
 同行してくれたエスクードはSIDEKICKさんのTD62WとコムロさんのTDA4W。
 四駆への切り替え時は一度停止しなけれはならない初期型の初代と異なり、路面変化に応じて任意に四駆へと走行しながら切り替えられる2代目と、様々な走行制御デバイスを持つフルタイム四駆の3代目。
 やはりこういうときにはうらやましい。
 稜線を全ルートの半分の地点で県道に乗り換え、尾根の東側へと下る。
 県道だが未舗装路だ。
 西側へも同様に続くが、そちらへはエスクードの性能では降りることはできない路面崩落個所がある。
 東側は地山も安定していて、基本的には森の中を進むが、2か所ほどは山麓の風景を眺望できる。
 森の広葉樹はすっかり落葉して、林道には褐色の絨毯が敷き詰められている。
 枝線もいくつかあるが、もう何年も踏み込んでいないので今回は安全策をとり素通りする。
 山麓へ降りていくと、眼前にはもう一つ先の山肌が待ち受ける。この稜線を越えていくと、天狗の森がある。
 ただしそのルートは完全舗装されて久しい。北稜線もそうだが、僕がジムニーに乗り始めた時代は、この全線がダートだった。
 何度走っても隔絶の世を感じるのだけれど、この界隈はまだ楽しい。