ウエストウインの島雄司社長とスズキ自販福岡が試乗展示会を企画し、兼ねてエスクード誕生三十周年のための取材段取りをしてくださることとなり、福岡市へ飛ぶ。
 彼らとの交流はかれこれ十年になろうというのに、ウエストウインを訪ねるのは二度目でしかなく、しかも前回から五年が経過してしまった。
 にもかかわらず歓待していただいたばかりか、当サイトのブログの大ファンであるというご婦人・TJさんがエスコートしてくださり、駆け足のはずの福岡行きが予想外に密度の濃い探訪となった。
 ウエストウインが二台のエスクードを逸材ともいうべきドライバーたちとともにダートトライアルに繰り出しているのは周知のことだが、今期のモデファイには島社長のライバルにして僚友でもあるHANGARの高田浩三社長も加わり、さらなる伸びしろを与えようとしている。
 ここにウエストウインのチームメイトが様々なサポートを展開して、六月に迫った第二戦への準備が進む。展示会には多数の来客があり、なにげに新型エスクード購入の成約があったりイグニス希望の声がかかったり、盛況である。
 こうした賑わいの間隙をついて、ウエストウイン近所の「三日月食堂」や大宰府の「まん月堂」へ足を伸ばし、つくばーどっぽい「月攻略」の遊びも展開する。
 
 TJさんはジープ・ラングラーに乗る快活かつ博識なご婦人で、博多美人である。
 もう十分に恐れ多いのだがウエストウインから佐賀県の呼子港朝市や名護屋城址、唐津城、虹の松原などを案内してくださり、その道々の福岡、佐賀のガイダンスがまたわかりやすく退屈させないリズムで展開していく。
 単独行では時間勝負に終始してしまうだろうし、イカ刺しとメバルの煮つけも、からつバーガーも独りだったら黙々と食って単に「うまいね」で片づけてしまっただろう。
 なによりガイドを受けながら助手席の大名旅行である。景色も知識も押し流されずに入ってくることはありがたい。
 その上、間合いを取るのが上手な彼女の解説は脳内に記録しやすく、ユーモアも豊富。ついでに時々お茶目なところが最高なのだ。
 朝市で買い出しをした彼女はウエストウインに戻ると行商のお姉さんに転じる。トロ箱から一夜干しや切り身が飛ぶように売れていく。が、次々と店舗内の冷蔵庫に間借りとなる。
 「まあ、これがうちの日常です。大勢の仲間がレースも店も盛り立ててくれるんです」
 島社長は顔をほころばせる。彼らの今年の夏が始まろうとしている。