「ちょっと横須賀まで行きたいんだけど」
 という霰の≪旅がしたいんだよあたしゃっ≫な要請によって、道案内で助手席に乗り込んだはいいのだが、横須賀の何処へ行くのか聞いたら≪特にあてはないぜっ。お茶してご飯食べてかなっ≫な、かなりアバウトなリクエスト。
 お茶する部分は早朝移動で朝からやっているところが必要だし、ご飯となるとだいぶ時間が後になる。さてどうするかと掲示板に振ったらmadcrowさんがいろいろヒントをくださったので、汐入から観音崎経由で浦賀と久里浜を廻り、津久井浜のBlueMoonに向かうこととなった。
 BlueMoonは、「満月が1か月の間に2度巡ってくる」天文現象を意味する。最近では2018年の1月と3月にこれを眺められた。が、次回は2037年まで待たねばならない。
 そんなに待ってられるかい!と、変なこじつけで決めたのが、津久井浜のBlueMoon。パンケーキとスペアリブが名物の喫茶レストランだ。
 我が家で唯一、この店に行ったことのないのが霰だったということもある。
 しかし、BlueMoonは、あの≪和邇家≫の行きつけの店でもある。黙って出かけて行ったら、どこでどんな小言大言をくらうか想像に難くない。

 
 混雑を考えて開店5分前にお店に到着すれば、いきなり店員さんが
 「和邇さんのご予約の方ですね。テーブルにご案内します」
 先手を打たれているっ と冷や汗をかいているところへ、蓮田さんことハスラーFリミテッド大幅に改に乗った和邇さんと和邇お嬢妹が勝ち誇ったようにやってきた。
 「霰さん、ここに来たことなくて、スペアリブも好きだと聞いているので、もう仕込みを頼んどいた」
 「それはありがたいけど、あなた3日前に花巻、一昨日が月山、昨日は皆神山から連絡入れてきたじゃん。病み上がりで平気なのか?」
 「これぞ改造手術の賜ぞ。3日で1500キロ走ってもへっちゃら」←しかも部分車中泊だったらしい
 そうこうしているうちに、仕事が終わったので合流するよと、和邇お嬢姉から連絡があり、ややあって、いったい本当は誰の趣味なんだ?(とーちゃんの、に決まってる)な、実に趣味的にカスタマイズされたジムニーに乗った彼女がやってきた。
 なんてことだ。つくばーどの行事というより、彼女らに委託しているハスラーコミュニティー「HUSKY」のミーティングになりかかっているではないか!


 「ほんとだ。エスクードが1台もいない」
 霰に指摘され、形無しの親。それでも、コロナ禍抑制からの復帰行事という大事な側面もあるわけで、それがハスラーとジムニーのSUZUKIっずという組み合わせであることは、まあちょっとした話題ともいえる。
 そんなことより、久しぶりのスペアリブランチセット。箸を使って容易く骨から切り離せるほど柔らかく仕上がっているのがBlueMoonでの味わいだ。最近は横須賀市の広報誌やコミュニティー情報にも紹介され、お客が増えて椅子が足りないばかりかスペアリブ自体の仕込みも大変そうだ。
 店内の、娘らの女子会を放置して、親父たちはテラスに席を移してよもやま話。和邇さんはこの2年ほど闘病と治療で、一時はサイドキック2号を手放すから乗ってくれないかと相談を受けたほどだったので、予断を許さないとはいえ元気な姿を確かめられたことが何よりだった。