「どうも、新年おめでとうございます」

 と、この男はにこにこしながら玄関に立っていたのである。
 「ことしは寝正月で何もしないのだ」
 ご来光を眺めながら決めてきた直後の出来事に、思わず玄関のドアを締め直そうとしたが、いやそれよりこんな野郎は埋めてやると考えが変わり、寒稽古が始まる。
 裏山林道の一本目に向かい、入口で切り返しをせずに進入できたら勘弁しようとテスト。ショートのエスクードが回れないわけがない低難度ターン・・・と思ったらいきなり切り返しをやっている。これで埋め決定。これまで誰も連れて行ったことのない、裏山の裏山まで移動する。
 冬場なので藪こぎの心配はないが、ルートは先の見えないヒルクライム。斜度よりも土の状態がふかふかなので、トルクを上手に使わないと登れない。が、下見のあと乗り込んだTA51Wはそろそろと坂を上りはじめ、ゆっくりと登りきってしまった。むむむ、それでは次のステージだ。
 ヒルクライム入口のすぐ隣に、今度はヒルダウンしていく別ルートがある。ここも生い茂った森で土が乾かず枯れ葉が敷き詰められている。降りても戻ってこられるかどうかの保証はない。
 だが51Wはゆるりと下り、先の崩落箇所まで進んで崩落状態を確認して戻ってくる。
 むむむむっ、上出来である。これ以上深入りすると、サイドステップでクリアランスの下がったぷらすBLUEの方が危険な目に遭いそう。寒稽古は適度に済ませることとし、昼飯を食いに峠を越え、ことしの走り初めは完了するのであった。
 ・・・なんかこう、くやしい。