魅力を引き出すのはやはり使い方

 2005年5月16日、エスクードが3代目モデルへと成長しました。まずL4−2000ccが「CBA−TD54W」として登場。V6−2700ccの「CBA−TD94W」は6月の登場となります。
 LSD内蔵型センターデフ方式のフルタイム4WDと、2代目とは異なるリアのマルチリンクサスペンション。そしてラダーフレームを形だけ残しつつ、モノコックボディとなった3代目は、初代のライトウエイト4WD、2代目のクロスカントリーセダン(グランドエスクードではクロスカントリーワゴン)という、CCVの一つのジャンルをあらため、SUVへと生まれ変わりました。リアのナンバープレート位置、17インチ装備車でも背負っているのが16インチタイヤという「なぜ?」の気持ちも多々あるものの、これが3代目の姿。
 技術的進化と、ステータスのリ・ボーン(あえて退化とは言いません)を、ユーザーはどのように受け止めるのでしょうか。

 スズキエスクード2000−XG(AT)
 デカイといわれるほどには大きくない。確かに1810mmの車幅は、前方視界の道路幅との比較で、ワイド化されたことがわかる。このため、前席は先代以上にゆとりのあるスペースを持った。助手席のタイト感が、特に緩和されている。一方で、後席に関しては、ヘッドクリアランスが幾分小さくなったかのような印象もある。
 ややスラントぎみのノーズには、段付きエンジンフードとボンネットルーバー(初代の時は、このような呼称はなかった)があしらわれ、これをして初代とのつながりを演出する。しかしこのエンジンフードは妙に重い。モノコックはボディを軽量にできるものだと言うが、エスクードの場合、剛性を上げるための仕組みか、エンジンフードが異様に重く作られている。ボディレベルでは、思ったよりもフロントヘビーではないだろうか。
 初代はボンネットルーバーを持ってしてもエンジンルームの熱抜きがうまくいかなかったが、今度のものはさらに小さい。その分、3代目のフロントグリルは、バンパー側まで広い面積でラジエターへの空冷(エンジンは水冷)処置を講じている。
 バックドアを開けると、サードシートを潔くあきらめただけのことはある広いスペースが出現するが、奥行きよりも高さが強調されている。この空間の使い方にはコツが要りそうだ。スーツケース3個を縦に並べて持ち歩くというユーザーは、そうは居ないはずだから。
 エスクードをコンパクトビークルとして愛でる人々とはまた別に、オーバーフェンダーとホイールスペーサーも用意して、意図的にワイド化させて、四駆として安定感を求めた人々もいる。その方向性が今回、正面からのシルエットには大きく影響した。それではタイトターンが苦手になっているのかといえば、従前のパートタイム四駆でターンしていくときよりも、身軽だ。もちろん、ボディサイズを忘れてはいけない。
 後方視界は、初代ほどではない。ただし、初代のハードトップに見られた、Cピラーが邪魔で右斜め後方の死角という恐怖感は、3代目のCピラーにはない。後部ドアの窓の視界で、ここは十分に確保される。逆に、サイドミラーの大型化は、新しい死角を生んでいる。
 操作系はシンプルだと思うが、運転席であってコクピット感覚ではない。使い勝手は悪くない。パワーステアリングは、2代目よりも浮き足だったところが無くなった。フルタイム四駆によってフロント側の駆動抵抗との兼ね合いが、うまくいっているのかもしれないが、重い初代、軽すぎではないかという2代目(どちらもFR状態での走行)に対し、適度なキックバックで応答してくる。
 J20Aのリファインは、トルクバンドの拡大によるフラットトルクの実現。気負わず、静かなエンジンノイズのまま、80km/hまで2000回転以下で加速する。ただし1500kgを超える車重は、ワインディングの上りで頻発するキックダウンに現れる。
 非力なのか? おそらくそのこともあるが、それ以前に、この試乗でのゲート式ATセレクタの使い方が「なっていない」のである。
 Dレンジと3速固定は、手首をほんのわずかにスライドさせるだけで済む。これを使わず、さらに2速固定へのひねりも使わずのワインディングドライブは、機械が勝手にキックダウンを起こすので、面白くない。ゲートセレクタを自らの意志で積極的に操作し、トルクバンドを固定していくドライブをしなければ、2000ccモデルは山道での真価を見せてはくれないだろう。
 よく、V6−2000の走りは重いと言われ、L4−2000の瞬発力が優れていると言われた。どちらもハードトップのFR状態での比較であったが、今回はそれが逆の印象。やはりフルタイム四駆の走り方は、背中から押し出されるという感触が和らいでいる。もちろん、平坦地での走行は何一つ支障はない。乗車定員を満たしている場合は、多少ウエートを感じることになると思われるが・・・
 問題点は、意外なほどにエンジンブレーキが利かないことだ。下りのワインディングやストレートの坂道で、Dレンジから2速固定に落としても、初代ほどのブレーキフィールが得られない。市街地などでの平坦な舗装路でならば、2速に落とした瞬間、エンジンブレーキの効果は現れる。