なぜ、17インチホイール装着車まで、スペアタイヤを16インチとするのかは、ちょっと理解できない。このスペアタイヤ用ホイールはスチール製だが、XEグレードと同じサイズのデューラーH/L687をはいているのだ。テンパータイヤとして独立視すれば、申し分ないが、エスクードはスペアタイヤを裸のまま背負っていたい。とすれば、緊急用カラーに塗られた鉄ちんホイールは、いささか泣けてくる。
 リア側のナンバープレート位置も、今回どうしてバンパー下に設置したのか、大いに不満だ。ただでさえ、抑揚のないバックドアになっているのだし、クリアランスを考えても、バックドアにくくりつけるべきだと思う。ナンバープレートを設置する台座は、バンパーと一体成形の樹脂製だ。ナンバープレートを引っかけて曲げてしまうだけでは済まなくなるだろう。
 前後とも全面的に新設計された足まわりのうち、リアサスペンションは、2代目の5リンクリジッドからマルチリンクの独立型に変更された。これはオンロード側での性能向上を図ったもので、3代目を意図してSUVと位置づける部分。2代目以前は、走破性の程度はともかく、まず強固な足まわりを確保し、そのうえで乗り心地をなんとか追いつかせようという試みであったが、これを潔く切り替えた。
 マルチリンクサスだけではなく、ビルトインラダーフレームというボディ構造の、フレームという部位に関しても、初代のような頑丈なものではなくなっている。それだけに、多少、下回りをヒットしてもフレームがスキッドの役目を果たしていた先代達のような走らせ方をすると、痛い目に遭うかもしれない。
 ワイドボディを採用したことで、サスペンションストロークに関しては、余裕を持つことができたという。フロントでは178mmで18mm、リアは215mmで55mmの足長となった。ただし、300mm程度のゆるいクレバスに頭を突っ込んでみると、いとも簡単にリアは浮いてしまう。
 この程度のねじりでは確認のしようもないが、ひとまず、各部のドアは、抵抗もなく開閉音の変化もなかった。さらに段差を乗り越えていく際にも、下回りのヒットはなく、浮いている左リアなど放っておけというゆとりで降りることは可能だ。日常のドライブステージで、ガレ場に出かけてクロカンを楽しむユーザー層には心許ないだろうが、200mmのクリアランスがあれば、多くのエスクードユーザーは、油断さえしなければ、林道を走る楽しみを奪われることはない。この手のクルマは、SUVであろうがなかろうが、擦り傷やひっかき傷を気にしてはならない。
 残念ながら、デフロックを多用するようなステージにまで持ち込むのは、試乗車であるという良識から遠慮した。
 クロスカントリー性能は薄まったが、それでも3代目は、エスクードだ。いざというときには、ローレンジを使えることに変わりはない。レンジの切り替えとデフロックモードを選択するダイヤルは、ハイ/ロー切り替え以外のモードをプッシュ式で1アクション設け、ダイヤルミスを防ぐほか、選択エラー時のアラームと警告灯表示も行われる。トランスファーレバーを失ったが、マニュアルハブをロックするときの雰囲気を思い出せる。

 エスクードを知る人は、この3代目に違和感を覚える向きもあるかもしれない。
 けれども、ベーシックな部分でのメカニズムとポリシーを押さえながら、新しいフィールドへ乗り出していこうとするスピリッツもまた、エスクードを知る人でなければ理解できない。そして初めてこのモデルでエスクードに触れる人には、その未知の出逢いを通して、SUV+αの可能性をもたらすはずだ。
 このクルマは、ドライバーが育てていく。
 初代や2代目がそうであったように、エスクードはいつも、冒険の扉を持つ4WDなのだ。