Electroniic Stability Program。これがXS独自のトラクションデバイス。
 理屈としては、1輪がスリップした場合、センターデフ内のLSDによって差動制限が働き、残る駆動輪に駆動力が伝達される。前後1輪ずつがスリップした場合、LSDの効力は薄れ、スリップしているタイヤにも駆動力が伝達されてしまう。ここでESPが作動し、トラクションコントロールが行われる。
 パターンA=エンジン出力を調整しつつ、スリップしているタイヤにブレーキをかけることで、トラクションのかかる「スリップしていないタイヤ」に駆動力を優先的に伝達する。
 パターンB=4L+Lockが選択されている場合、タイヤが空転してもエンジン出力は抑制されない状態で、スリップしたタイヤにブレーキをかける。トラクションのかかっているタイヤには、Aのパターンよりも強い駆動力が伝達される。
 パターンC=Bのパターンでは、アクセルワークに応じた駆動力を発揮するローモード専用制御が作動している理屈。このとき、スタビリティ・コントロールは機能しない。
 スタビリティ・コントロールは、オーバーステアの際、外側のフロントタイヤに制動がかかり、アンダーステアの際にはエンジントルクを低減させながら、内側のリアタイヤに制動がかかる仕組みだという。
 これはなかなか体感できない。さらには前後1輪ずつのスリップというシチュエーションも曖昧だ。
 コーナーを回っていきやすい。泥の中に浮いている丸太を踏み越える際に、前後ホイールともずるずると滑ることがない。少なくとも、クロスカントリー走行を必要としない林道にあっては、下回りをヒットしないか? 道幅は確保できるか? といった面の方が重大要素になっている。凍結路、積雪路では条件が異なってくるが、低速走行を続けている間は、LSD内蔵センターデフやESPが、それとなくサポートを繰り返し、スタックを実験することも出来なかった。
 ESPを解除してみる。変化はハンドリングに現れ、自動制御の制動がかからなくなる間、ステアリングは幾分軽くなり、荒れた路面では操舵が多少忙しくなる。

 それでも3代目でクロスカントリーをやりたい! という人ならば別の話になるが、メーカーの示すSUVというジャンルとして活用するユーザー層には、必要充分な性能を盛り込んでいる。もちろんXGやXEも、実用域として評価するなら、充分に他車と渡り合える。XGの項では17インチタイヤを前提とした評価でインプレッションをしているが、やはり16インチを標準としてタイヤ側の選択肢を拡げていった方が、より乗り心地や小刻みな突き上げの改善につながると思われる。
 致命的なウイークポイントは、全車共通しているシートアレンジだ。ラゲッジスペースの広さは、パッセンジャーには貢献しない。ドライバーが単独で遠出し、車中で仮眠する際に、擬似的なフラットのできないフロントシートの前方スライド量(おそらく1ノッチで解決できる)は、要改善ものだと主張したい。