《夢を叶えるために》


 2015年。その世界では、WGPX(サイバーフォーミュラ・グランプリ)が10回目の開催を迎えています。
 サイバーフォーミュラとは、高度に発達したナビゲーションAIを搭載したレーシングマシンで世界を転戦し、年間10レースのポイントを競う国際モータースポーツ競技。この時代、自動車には運行サポートや車両の自己診断機能を司るナビゲーションコンピュータが組み込まれ、これらにサイバーホイールという名前が与えられています。
 サイバーフォーミュラは、その最高峰のレースであり、新世紀のGPXとして受け入れられています。


   アスラーダ GSXは、チーム・スゴウ・グランプリがこの年導入したニューマシン。
 サイバーサイクル5000ccV10エンジン、最高出力1200ps/20000rpm、最大トルク120Kg−m/12000rpm、最高速度420Km/h+αを誇るトルクスプリット4WDマシンです。基本性能は、油圧コントロールによる車高クリアランス調整、車体左右に設置されたエアブレーキと、その下側にあるエフェクト・ファンによる強制ダウンフォース発生や、ファンの逆回転を応用した簡易ジャンプが可能。
 最高速度420Km/h+αの「+α」は、エンジンブロックに装備されているブーストポッドによるもので、27秒間の1.7倍へブーストアップが可能です。


  しかし、最大の特徴は、これらのマシンシステムをサポートするサイバーコンピュータ・アスラーダ(CC・A)にあります。他のサイバーフォーミュラとは一線を画した、超高度なAIとして開発されたCC・Aは、ほぼ一つのパーソナリティ=人格を確立しており、単なる学習型AIを遙かに越えた思考・自己判断が可能な性能を有し、ドライバーに的確なアドバイスを与えるだけでなく、自らの状態を喜怒哀楽としても表現できる優れものです。
 アスラーダは、マシンの名前であり、サイバーコンピュータの名前でもあります。後に、大破したGSXから、全く新機軸の可変マシン・スーパーアスラーダシリーズへと移植されます。


 ラリーアスラーダは、GSX−Rの型式を持つ、GSXのボディパネル組み替えと、大型補助灯組み込み式専用ナビゲーションアンテナ、オフロード用クリアランスと専用タイヤ、補助灯組み込み式フロントガードなどを装備させ、サファリラリー仕様として登場しました。
 サイドインテークは防塵フィルターでカバーを施し、低下する冷却効率を補うために、ブーストポッドの位置を高め(ブースト使用状態位置)に配置。可変式リアウイングの可動位置も変更されています。
 GSXの汎用性の高さは、こうしたボディの組み替えで、レース条件に迅速なセッティングを行えることです。ラリー仕様以外に、水上走行用のフロートパーツも存在しました。
 このボディ形状の組み替え機能は、後に登場するスーパーアスラーダが、一つのシャーシを複数タイプに変形させる技術を実現し、他チームのマシンにも浸透していきます。