《スーパーアスラーダ01》

 アスラーダGSXは、サイバーフォーミュラ・マシンデザイナー・風見広之によるスーパーニューロコンピュータを使用したサイバーシステム「アスラーダ」を搭載した初のマシン。ラリー仕様、水上走行仕様へボディを組み替えることが可能。また、ダウンフォースを制御するエフェクトファン、レーダーサテライトや射出アンカー等も搭載する。2015年ブラジルGPでの3位が最高成績。カナダGPの予選中に大破し、スーパーアスラーダの登場で現役を退くが、そのスーパーアスラーダがドイツGPでクラッシュし、最終戦の日本GPではスーパーアスラーダの修復が終わるまでのリリーフとして復活、レースの80%を走り抜け、スーパーアスラーダに奇跡の逆転劇を引き継がせた。
 GSXの開発は、SUGOチームではなくミッシングリンク・チームの英国ファクトリーで進められていたが、車体そのものは風見や菅生オーナー、車田監督といった世代の、過去の記念写真に原型となるマシンが写っていることもあり、早い時期に基礎設計は完成していたものと見られる。
 ミッシングリンク・チームの背後企業体内にサイバーシステムの軍事転用を図る動きがあり、それに気付いた風見はシステム・アスラーダを搭載したGSXを日本へと搬出、SUGOチームに委ねた。ミッシングリンクのエージェントは執拗にGSXのサイバーシステム奪還を繰り返す。そのさなか、偶然にもシステム起動時のドライバー登録プログラムによって風見の一子であるハヤトが登録されてしまい、SUGOチームは風見ハヤトを正規のドライバーとして2015年シーズンを闘うこととなる。



 SUGOチームがGSXによってグランプリ転戦を開始した頃、もう1台のアスラーダ搭載用サイバーマシンも完成を遂げた。それがスーパーアスラーダであり、サイバーシステム・アスラーダの性能をフルに発揮するために開発された本来の専用マシンだ。水素燃料を用いるサイバーサイクルエンジンはV型12気筒5000cc、23500回転で最大出力1800馬力を引き出し、最高速度は時速500kmを越える。
 前4輪、後2輪のホイールレイアウトが特徴。サイバーフォーミュラ初のサーキット・ラリー・エアロの3モード変形機構を有する。
 2015年シリーズのカナダGPで、それまでアスラーダを搭載していたGSXが大破し、イギリスGPから投入された。GTマシンの流れを汲むGSXとは基本設計から異なり、本格的なサイバーフォーミュラマシンとして、後の各チームのマシン開発にも影響を及ぼす。SA-01並びにSA-01/Bのスペックを経ており、Bスペックは新素材を使用したB型モノコックを採用、日本GPに投入されている。


 SA−01というコードは、シーズン中はあまり重要視されておらず、チームでもGPオフィシャルでも「スーパーアスラーダ」の愛称で呼び合っていたようだ。2016年以降、11(ダブル・ワン)シリーズが登場してから、車体識別のためにゼロ・ワンと呼ばれることが多くなる。
 スーパーアスラーダの車体構造は、レースステージに応じて走行中でもオートマチック変形を可能とする。基本形態はサーキットモードにあたり、ダートコンディション時には前後サスペンションのクリアランスを上げると同時にフロントカウルがスライドして補助灯類を備えたプロテクションプレートに入れ替わる。また、コクピット前面から左右に取り付けられているカウルパーツも分離・回転してエアロフェンダーに変更される。
 エアロモードでは、フェンダー部の変形のみが行われ、サイドウイングを下げて空気抵抗の低減と重心移動を図る。ラリーモード、エアロモードでは、サーキットモードの時には格納されている車体側面のエフェクト・ファンを展開している。時速400km台の速度域で行われる変形のため、極力シンプルな行程を実用化しているが、それでもラリーモード移行時のフロントの変形システムは複雑になっており、パーツの強度維持のためにもある程度の重量増加は免れなかった。
 こけらの変形は電気信号と油圧によって稼働するが、初陣においてはレース中の降雹を巻き込み油圧シリンダーが破損。変形システムに支障を来すというトラブルに見舞われた。

 本来、スーパーアスラーダは白い車体にブルーとレッドのアクセントカラーをあしらうSUGOチームオリジナルマーキングが施されている。ここに登場している黒い車体は、風見ハヤトがアテネ〜パリ間のドッグファイトレース・ファイアーボールに初参戦し、初優勝を遂げたという2015年シーズンのニュース・トピックに対応し、SUGOチームにおいて記念仕様として、デモンストレーション用の特別カウルを取り付けたものだ。ただ、ハヤトがファイアーボール参戦に投入したのはGSXの方で、このときスーパーアスラーダはアフリカGP直前のセッティング中であった。