《CYCLONE-1 with LIGHTNING》
 ショッカーとの戦いは、本郷猛にとって、日常化しているわけではない。彼に軍隊並みの戦闘力と物量があれば、能動的に敵の本拠地を暴き出して殲滅に立ち上がることも考えただろうが、現実はそんなに都合良くできていない。
 もう一人の自分とも言うべき一文字隼人や、新たに運命を共有することとなった風見志郎との出逢い、そして立花藤兵衛の後方支援を得られることが、彼にとっての最大の戦力。もちろん、猛にとっては千人力に匹敵する仲間の存在ではある。しかしそれだけでショッカーを根絶できるかどうかは、猛には想像もできない。
 だから、敵の改造人間が彼の周囲に脅威を及ぼさない日々にまで、自らショッカー追撃の行動を伴うことはない。立花レーシングで整備とライディングの技能を磨くのは、戦いに備えての訓練というより、自分自身の生活の潤いを求めてのことだ。そしてその合間に進めている水の結晶の研究は、一文字のリジェクションに対する細胞活性化のヒントを分子レベルの領域から探すために再開したものだった。
 
 「親父さん、せめてアンダーカウルくらい残した方が良かったんじゃないですか?」

 その日、サイクロン1号改のバージョンテストに臨んだ猛は、車体をほとんどむき出しにしてしまったマシンを見て、どことなく頼りない印象を覚えた。新エンジンの搭載後、いくらかオーバーヒート気味であったことから、立花はオイルクーラーの増設を施そうと、カウルをストリップした。作業の途中、これはこれで良いのではないか? というひらめきがよぎったのである。

 「まあこれが嫌なら元に戻してやるよ。モタード風に作るならXRあたりのボディからやるべきだし、こいつに小径ホイールは似合わんからな。とりあえずLightening、軽量化ってわけだが、コンセプトとしては綴りから“e”を取っ払って“Lightning”ってところだな」
 「サイクロン・ライトニング・エディション、ですか」
 「ヘッドカウルは、1号改のときよりも、やや上側にオフセットしてあるが、見た目の話であまり意味はない。強いて言えば上体を伏せやすくした感じだ。サイド側の整流効果が無くなった分、上側でダウンフォースがどのくらい使えるかを確かめてくれ」
 「わかりました。それじゃあ、ちょっと乗ってみます」
 
 猛はサイクロンをガレージの外に持ち出した。

 「こういうのは案外、一文字の好みかもな・・・」

 ライトニング・エディションは、1号改のクーリングシステムが完成するまで使われたようだ。立花はこのあと、サイクロン2号のカウルとサイドパネルを移植し、一文字隼人用のマシンとしてこの仕様を完成させていく。


※お断り この物語はつくばーどオリジナルであり、「仮面ライダーtheFIRST NEXT」には、直接結びつきません。
時系列としてはCYCLONE 2,with improvedの前にあたる、サイクロンの進化の途上をイメージしています。