《何処へ往くのか ただ一人》

 自然破壊と公害問題をはらむ企業の実態調査中に殺害された実子の遺志を継がせようと、ロボット工学の権威である光明寺博士は、13体の人造人間を開発し、その研究仲間でありパトロンであり、人造人間製作の依頼主でもある富豪、ギル・ヘルバート教授に提供した。
 だが、ギル教授の真の目的は、これらの人造人間を意のままに操り、世界を支配することだったのだ。
 そのことに気づいた光明寺博士は密かに、悪い命令には従わない、自己判断・自律思考の可能な人造人間の開発に着手、これをジローと名付け、システムの中枢となる良心回路の開発を進めた。
 光明寺博士の不穏な動きを察知したギル教授は、人造人間グレイサイキングを派遣し、光明寺の研究室を襲撃する。光明寺は、残された長女ミツコと次男のマサルを護衛させるため、良心回路の完成が間に合わぬまま、ジローを起動し、逃亡させ、自らも行方不明となってしまった。
 ジローは不完全な良心回路を内蔵しながら、ミツコとマサルを護り、ダーク破壊部隊の追撃に立ち向かう。

 ジローに用意されていたものは、偏光透視機能を持つサングラス、光明寺の長男が愛用していた赤いギター、ジェットタイプのヘルメットとカワサキ250SS・マッハTにボートを装備したサイドカーだった。
 この250SSの原型は、空冷2サイクル3気筒の249CCで最高出力32ps/8,000rpm、最高トルク3kg/7,000rpm、乾燥重量148kg。同クラス唯一のオーバー140km/hという駿足を発揮するモデルだったが、ジローのそれはスタイルだけを模倣したカムフラージュで、ジローが戦闘形態へ“チェンジ”すると同時に、戦闘用サイドマシンへとスイッチオンする。
 通常形態のこのスタイル時でも、ジローの電子頭脳と指笛による超音波で遠隔操作され、無人走行をすることが可能だ。ジローはこのサイドカーで単独行動をとり、行方不明となった父を捜して旅をするミツコとマサルを陰から護り続けた。

         《なぜ出ないのでしょう? こんなにかっこいいマシンなのに》


 というわけで、無いのなら仕方がないと、キャラウィールで造ってみました。

 このサイドカーのベースは、劇中ではカワサキの250SS・マッハTで、500SS・マッハVベースのサイドマシンとはまったく別のオートバイです。ちなみにハカイダーの白いカラスは、750SS・マッハWにあたります。
 設定から考えると、ジローのサイドカーは、後にゼロワンのダブルマシンへと改造されているため、キャラウィールダブルマシンをベースにして逆のことを行い、透明のフロントカウルや尾翼、増加排気管を取り外してしまえばいいのですが、ダブルマシンのバイク側を見ると、エンジン部分を覆うサイドカバーが、ボディそのものを成形しており、流用は不可能です。
 また、後述する代用バイク、マッハTと比べて、ダブルマシンは全体的に車高を落としており、微妙にディティールが変わってしまっています。しかし幸いにも、ボート側は装飾を取り払うことと、多少の加工で、流用が可能です。

 マッハTに相当する形のキャラウィールは、リリースされているものでは以下の3種類が存在します。

 ・ショッカー戦闘員バイク
 ・ハカイダー四人衆版白いカラス
 ・ハカイダー四人衆幹部ハカイダーバイク

 実は全部、同じバイクのリペイントリリースです。
 塗装の処理のしやすさを考えると、白いカラスの車体色が理想的なので、これをベースとします。
 なんと、「昨日の敵は今日の友」になってしまうのです。

 まず、白いカラスのマーキングを削り取っておきます。丁寧にやる場合は、塗装もはがして下地処理をしますが、今回は省略。
 サイドカーの車体色はイエローベースとなるので、下地処理をするか、一度白に塗り替えるかしないと、元の車体色が透過して見えてしまうことがあります。 イエローは最も光の透過率の高い色だからです。
 また、この時点でスタンドパーツも切り取ってしまいます。
 バイクの解体は、サイド部分に打ち込んであるピンを抜き取れば可能ですが、解体しなくてもスタンドを切り取ることは出来ます。必用なのはスタンドを可動させるバイク底部のスリット確保だけです。

 次にダブルマシンを解体します。ボートの底面にあるビス2本を外し、ボートを台車から取り除くと、ボート側の排気管や尾翼を外しやすくなります。尾翼の基部は残して、カッターなどで切りとってしまいます。排気管はボートの枠組みの一部ですが、これも取り払います。
 バイク側は、左側サイドカバー部分のビス2本で解体できます。このビスは、ボート側台車のステーをバイク側に固定する役目も負っています。バイクを解体すれば、ボートは完全に分離できます。
 分離したボートは、一次塗装に備えてマスキング(シート、タイヤ部分)を行い、下地処理のサーフェイサー(できれば白仕上げ)を吹いておきます。

 ボートをマシンに固定していた台車のステーを加工します。これが今回一番の力仕事です。
 金ノコなどでステーの前半分を切断します。
 これだけだと、ステーの高さがバイクの内部空間のとは合いません。そこで残った後ろ側部分のステーも、約三分の一の高さを残して切断します。1時間もあれば、切断は手作業でも完了できます。
 ボートの内側(右側)には、ダブルマシン用の追加排気管が一体成形されています。これは削り落として面を均一にします。

 一次塗装を行います。バイクにもマスキングをした方が無難です。ベース色は適当ですが、イエローだけでは実車とは少し違うので、イエローをベースにオレンジを少し加え、さらに不透明度を出すために白を少し混入させ、レモン色よりも赤みのあるイエローに合成します。
 ボート側は、台車とボートを別に塗装します。ボートの風防は透明パーツなので、解体時に取り外しておきます。台車からボートを外し、ボートの下側から抜き取る構造になっています。シートはマスキングします。

 乾燥が確認できたら、バイク側タンクとサイドカバーに赤のラインを入れます。
 この赤も、ワインレッドと思われますが、赤にごく少量の黒を混ぜるだけでも近い色になります。
 再び乾燥放置。ボートを組み立てます。
 ボート外側に、排気管を取り払ったための隙間が出来ます。これはパテ埋めし、もう一度車体色を塗り直します。こちらも再度乾燥放置。

 二次塗装と乾燥を終えたバイクと、ボートを連結し、ステーを接着させます。各部の残りの仕上げ塗装(ヘッドライト、ナンバープレート、ボートのテールランプなど)を行い、完了です。

 なお、まったく不要となってしまうダブルマシンのフロントカウルは、一部を切断し、ヘッドライト周りの切りカキを作り、「本郷猛用常用ニューサイクロン」のビキニカウルへと流用しています(常用型サイクロンの項を参照)