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《アギトの力 格闘編》 |
科学警察研究所でアドバイスを受けた津上翔一は、にわかベジタリアンとなって野菜と果物を摂取し続け、ときどき郊外の森に出かけて変身を試してみた。榎田ひかりの言う通り、オルタリングによって形成されるオルタフォースは、翔一の摂取した食物の内容によって微妙に性質が変化するようだ。
翔一にとって幸運だったのは、変身に伴う肉体の消費エネルギーが膨大であるため、オルタフォースがとてつもないカロリーを吸い上げ、翔一自身を太らせないことであった。しかしその「特質」を備えたオルタフォースによって変形するマシントルネイダーには、その蓄積が大きく形状に影響を与えてしまうのである。警視庁の氷川誠と繰り広げた焼き肉勝負で、上カルビ80皿、ロース30皿、タン塩20皿、熟成ハラミ24皿を食い尽くした翔一のオルタフォースは、もろにトルネイダーを肉食獰猛系へと変貌させてしまったが、野菜の摂取によって再び、その形状に変化が始まった。
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「ずいぶんと引き締まったじゃないか。これならハングオンもやりやすいがな・・・」
マシントルネイダーは、翔一が変身を解いてもまだファイヤーストームに戻らない。逆に車体形状は、かなりスリムになっている。変身と変形を見届けた葦原涼は、ひとつ気がかりになっていた。
「津上、やっぱり食い物だけでこいつを元に戻すのは無理なんじゃないか? 結局は偏食指向が別のところに行くだけだ。このまま進むと、トルネイダーがもやしみたいになっちまうかもしれない」
「そうですねー。やっぱ身体も鍛えないとだめですよね」
「俺が水泳をコーチしてやるよ。全身くまなく運動するなら、泳ぐのが一番いい。そのうえで肉野菜、魚と、バランスよく食事するんだ。そうすればオルタフォースは健全なエネルギーに変換できると思う」
「わかりました。その手でいきましょう!」
「その話、僕も混ぜてください!」
立木の陰から現れたのは、氷川誠警部補であった。
「氷川刑事・・・あんた捜査一課に配属になったんだろ? なんでまた未確認生命体対策班の制服を着ているんだ?」
「ああ、葦原さん知らないですよね。氷川さんはこの前、G5システムの教導隊指導員に任命されたんですよ。訓練生へのシステム指導は尾室さんがやってますけど、実務配備されたG5の隊員向けに、全国地方巡業」
「ちょっと津上君、巡業はないだろう? 相撲取りじゃないんだからさ!」
「似たようなもんじゃないですか。ほら、なんかこうほっぺたも張りが良いし、制服のおなかもちょっと辛そうですよ」
「だ、誰のせいでこうなったと思ってるんだ? ラーメンにケーキに焼き肉。勝負につきあわされるこっちの身のことも考えてよ」
「あ、そんなこと言うんですか? この前の焼き肉は栄転祝いなんですよ」
「えっ、そんなこと聞いてないぞ。だって津上君がほとんど1人で食ってたじゃないか」
「ああもう判ったうるさい! つまり、氷川さんも減量の必要があるということだな?」
「そう、そうなんですよ葦原さん。G5の装着がちょっとね」
「へー、でもG3−X以降、誰でも装着できるオートフィット機能が標準装備じゃ・・・」
「それが油断だったんだよ。気がついたらもうウエストがさ・・・って津上君、そんなことキミには関係ないだろうっ」
「そうだよな。こいつだって食い過ぎで、マシンの変形に異常が出たんだから」
「いやいや、でも僕はここまで戻してますからね」
「お前はアギトの力でそうなってるんだ。人間の減量はもっと大変なんだぞ」
「そうそう、言ってやってくださいよ。よーし津上君、スポーツなら負けない。200m自由形でどっちが速いか勝負だ!」
「またまたそんなこと言ってー。氷川さんが負けたら何をおごらせようかな」
翔一と氷川のやりとりを見ていて、「こいつらやる気あるのか無いのかさっぱりわからん」と、葦原涼は溜息をつくのであった。 |
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※ あくまでつくばーどオリジナルであり、
「仮面ライダーアギト」というドラマとは無関係・・・
いやほんとに無関係です。
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