《アギトの力 核心編》

 「アギト」の力は、光の力を根元とするものらしい。これは、オーヴァーロードと呼ばれる人類の始祖、「闇」と「光」の存在がかかわっている。アギトの力は、そのうちの光の存在が人類に与えたものだからだ。オルタフォースは、光の力が人類をアギトへと超進化させ、生み出される。
 しかし、人類の始祖は闇の存在から発している。それはアギトとは異なるヒトとしての成り立ちであり、本来は相反する力を持つものでもある。この矛盾が、アギトの力に覚醒した津上翔一を翻弄するのだ。

 
  「健全な魂は健全な肉体に宿る。オルタフォースもまた然りだ。何も考えずに水と同化し、無我の境地で泳げ!」

 葦原涼は、事故がきっかけで不完全なアギトの力を目覚めさせ、水泳選手としての人生を絶たれた。ギルスとして生きなければならなくなってから、自分自身も、人間であるための境界線を越え、越えた場所から戻ろうとする苦しみを嫌というほど味わってきたが、翔一や翔一が居候していた美杉家の風谷真魚によって救われていた。
 彼等と出逢わなければ今の自分が存在することはなかったと、涼は心から思っている。それだけに、翔一の悩みには親身になるのだが、G3シリーズという、並みの人間では持て余す強化服を使いこなしてきた氷川誠でさえ音を上げるスパルタ指導になってしまう。翔一に至っては無我の境地というより、がむしゃらに手足を動かす以外、考える余裕もない。

 「よーし! とりあえず5日間、2人ともよく頑張ったな。氷川さん、ウエスト締まっただろう?」
 「そ、そりゃもう・・・これだけ泳いだんですから。こんなに水呑んだの、あかつき号事件以来ですよ」
 「津上はどうだ?」
 「ふ・・・ふやけたー」
 「それじゃあ実験だ。裏にトルネイダーを持ってこい」

 翔一はへとへとの身体で水からはい上る。へとへとではあったが、心なしか初日に比べると、回復力は上がっているように感じる。隣の氷川を見ると、ベルトの穴の位置をひとつ小さくできた彼は、勝ち誇ったような笑顔だ。
 これは翔一も負けていられない。
 林の樹木は、外の世界から3人を静かに隠してくれる。翔一はそれでも周囲の気配を一度監視しながら、近くには誰もいないことを確かめ、トルネイダーの横に立って身構えた。

 「変身!」
 腰に浮かび上がったオルタリングが輝きと共鳴を繰り返しながら変貌し、翔一をアギトの姿に変えていく。

 「あれっ?」
 「おい、それは!」
 「その姿はシャイニング・・・」
 翔一はいきなりシャイニングフォームに変身してしまい、あわててオルタフォースを拡散させる。シャインニグのアギトは瞬時に翔一の姿に戻った。

 「バ、バイク・・・は?」
 「おお? なんだこれは?」
 「あーあ・・・やっちゃったー」
 トルネイダーは依然としてそのまま。しかしカラーリングがシャイニング風に変化している。
 涼は、翔一の単純明快さにあきれたものの、招いた結果に狼狽してしまう。

 「ほ、ほらな、健全なオルタフォースが宿った・・・」
 「そ・・・そりゃないでしょーっ」
 再びへとへとになって座り込んでしまう翔一に、氷川はなぐさめるように声をかけた。

 「とりあえずさ、飯食いに行きましょう。僕がおごりますよ」
※ あくまでつくばーどオリジナルであり、
「仮面ライダーアギト」というドラマとは無関係です。
そんなことないだろう? それは気のせいです。