《セカンドファイルのトータス》

 S.R.I.の特殊科学捜査活動が、21世紀初頭に再び確認された。時代の推移とともに複雑・高度さを極め、また人知の想像を絶する怪奇事件は留まるところを知らず、彼等を必要としていたのである。
 その一方で、科学技術の日常への浸透も、蛇口をひねると水が出ることが当然であるかのように、グローバルスタンダードのうねりの中にある。
 彼等の活動の黎明期には特殊装備とされていた化学繊維や通信機などは、街の量販店でいくらでも手にはいる。コンピュータ機器を片手で持ち歩けるばかりか、胸ポケットに電話を携帯できる時代なのだ。
 そのせいもあってか、S.R.I.の標準装備は、一般人とほとんど見分けの付かないカジュアルなものとなっている。

 
 あの愛らしく、しかし誰が見ても不格好であったトータスも、いつ退役したのか不明だが、2代目にスイッチされていた。白いボディにガルウイングドア、2シーターというコンパクトコミューターが、トータスのコンセプトであったが、2代目はその機能もスタイルも驚くほど洗練された。
 先代はS.R.I.による独自の設計と思われるが、2代目は量販車がそのまま活用されている。これも工業デザインの進歩なのだろう。
 先代のエンジンは、小型ロータリーであったと言われている。2代目は、これが量販車そのものであるなら、660ccDOHCインタークーラーターボをリアミッドシップ搭載している。樹脂製のボディは軽量化だけでなく、用途に応じて車体の形状を組み替えることも可能だ。
 電子制御も進んでいるらしく、強力な電磁波によって作動不能に陥ることもあるようだが、それこそが21世紀の科学犯罪や怪奇事件の世界なのかもしれない。
 なお、東京のとある街が時空異変を起こした際に確認されたトータスとは、ホイールデザインが異なっている。同事件において作動不能となったトータスに対して、三沢京介らは「車検に出したばかり」と語っていたことから、このトータスのスチルは、車検を受ける以前のものとも推測できるが、真実は未確認である。