《こいつは かーなーり速いぜ》
 マシンゼロホーンの基本的なスペックは、マシンデンバードのそれと大差がない。というより、まるっきり同じである。
 唯一の特徴は、フロントカウルに取り付けられたゼロゼロホーンと呼ばれる一対のツノと、デンギャザーよりもコンバーター能力が高いと推測されるホーンギャザー程度だ。
 ゼロゼロホーンは突撃攻撃用に用いられ、タンクローリーも一突きと言われるが、どう考えてもツノよりも前にカウルのノーズがあり、さらにフロントタイヤが前に出ているため、物理的に衝突させるのは困難のように思える。
 ひょっとすると、フリーエネルギーを集積・フィールド化して、前面投影範囲に強力なエネルギー障壁を産み出す機能が組み込まれているのかもしれない。。
 ゼロホーンもデンバード同様、列車型タイムマシン・ゼロライナー車内に格納されている。オートバイであり、ゼロライナーの操縦システムとしてリンクする点も、デンバードと全く同じで、これほど解説するのが面白くないマシンも珍しい。ミラーワールドのライドシューター以来の没個性だ。
 だが、ライドシューターは完全な同一企画品として使われている分、まだ潔い。とってつけたようなアンバランスな架装でお茶を濁されてしまったゼロホーンには、むしろ悲しい宿縁が漂う。

 ゼロホーンを使用する仮面ライダーゼロノスは、野上良太郎の実姉・愛理の婚約者で、行方不明となっている桜井侑斗と同姓同名の男が、イマジン・デネブと契約して変身する。強化服や電化面、イマジンの力の発現機構は、仮面ライダー電王とは異なるコンセプトによって開発されている。
 ところが、ライダー、ライナーの双方が、互いに専用・特化した意匠設計を施されている。少なくとも、デンバードとデンライナーには、新幹線形車両をイメージさせる共通項がある。
 一方、機関車形車両として開発され、しかもノーズが猛牛タイプから戦闘形のドリルモードへ変形できるゼロライナーに比べても、デンバードと同じタイプのオートバイに架装しただけのゼロホーンには、専用機としての趣も、ゼロライナーとの共通項もない。
 おそらく、機動マシンとライナー制御を兼ねるデバイスとしては、単なる普及市販品が利用されているだけのことなのであろう。デンライナーのようなタイムマシンならともかく、その車内備品の全てがオーダーメイドの一品ものという必要はない。

 「最初に断っておくが、こいつは、かーなーり速い」

 とハッタリを咬ましておけば、それで充分なのだ。あとはゼロノスのマシンテクニックに委ねるべき問題。それでこその仮面ライダーではないか。それでもし勝負に負けるようなことがあれば、デネブが謝罪して丸く収めるのであろう。 しかしせめて、車体色くらいゼロライナーに合わせて変えてやるべきだ。