見せたい景色
星と空と稜線
 霰も霙も、第一回目にあたる朝霧高原のつくばーどには来たことがあります。その日も快晴の空にコニーデ型の雄大な稜線がそびえていましたが、なにしろ8年も前のことで、
 
「富士山、なんとなく見ていたような気がする」
 
「すみません、なんとなくしか覚えてません」
 それはまあ無理も無いでしょう。それじゃあちょっと見に行ってこようかと、丑三つ時に出発して、明け方に朝霧高原にたどり着きました。自宅の庭からも夜空の星座は良く見えていますが、さすがに森の中の空と高原の空とでは、広さが桁違い。仮眠もせずに天体観測です。
 しかし車を仮り置きした撮影地は、日中は穴場のような景観ながら、夜間は街路灯の明かりを拾ってしまって色彩が壊れてしまうことが判り、やっぱりふもとっぱらの牧草地が一番いいなと、明るくなるまで道の駅にビバーク。そのまま朝食をとって一休みしていたら、富士五湖方面にドライブに出かけてきたというだいすけさん・みきさんご夫妻に見つけてもらい、缶コーヒーやらスモークチキンやらの差し入れまでいただきました。
 ここで声をかけてもらわなかったら寝過ごすところ。だいすけさんたちも、普段なら道の駅には立ち寄らずに朝霧を通過するということだったので、まったく偶然に救われたようです。
 つい数日前に、この年のつくばーどを開催したばかりのふもとっぱらキャンプ場に入場し、撮影場所を確保しますが、いざ誰もいない牧草地に踏み込むと、どこに設営したらよいのやらと迷うだけ迷います。
 ふと気がついたことは、どうもこの場所で、宇宙戦艦ヤマト実写版のロケをやったのではないかということ。古代守、進兄弟の少年時代の回想シーンで、兄弟が遊んでいる場所がこの牧草地を使った撮影に思えます。
 遠くの森が一部分途切れていて、その奥の草原が見えているところが、ふもとっぱらの特徴。映画のシーンではあえて曇天で富士山が霧に隠れた日を選んでおり、場所の特定をさせない演出をしていますが、遠くの森の途切れ方が非常に良く似ています。
 それは我が家にとっては、あまりたいした話題にはならなくて、霰たちは雲ひとつ無い青空にそびえる稜線と、たなびく裾野の大きさに、眼を見張るのでした。
 あまりにも定番過ぎて、いつでもいいやと思っていた富士山展望でしたが、絶妙のタイミングで、見せておきたい景色を眺めることができました。