つくばーど採用歴代エスクード史 その5の八


 地球・月往復を達成



2020年6月10日、帰還



 最長不倒距離を奪取したことで、BLUEらすかることTD61Wは大役を果たすことができました。
 ただし、役目が終わったということではありません。
 このエスクードはそれまでの最長不倒距離である587000キロを刻んだ時点で、地球から月までの距離を走りぬき、地球への帰還フェイズに移行していたからです。
 384400キロの、復路。もはや乗用車がやることではなく、日本ではタクシーでさえ走らない距離です。
 でも、古い世代のランドクルーザーやパジェロにはその実例があります。堅牢なフレームと車体、丈夫なエンジン、伊達と酔狂を実益に取り込んでしまえるユーザー。3つ揃えば700000キロを越えていけるはずだと、再び気の遠くなる挑戦に乗り出しました。
 だって、ねえ。初代エスクードがなんとなく再評価され、クロカン四駆の端くれとして認められてきたし、先代らすかるでできなかった地球と月の往復距離を、ここでやらなかったら絶対に後悔するじゃありませんか。
 そのうえ、再評価されようともスズキに生まれた四駆である以上、何をどうあがいてもジムニーの存在にはことごとく打ち負かされる運命を背負っているエスクードです。
 せめて、ジムニーでもそう容易くはできないだろうという金字塔を打ち立てたい。今のライフステージなら不可能ではない。と、皮算用をしているところへ、東京帰還命令も降りてきたのが、2019年のはじまりでした。



どこまで行けるか

 ちょっと遡って2018年。それはエスクード誕生30年という年回りでした。
 ジャンルを大きく変えた四代目エスクードを交えながら、30周年を仲間たちと祝うも、メーカーはたった2つのツイートでエスクードの30年を片付けてしまうし、20周年の頃に存在した四駆雑誌も激減。社会情勢はハイブリッドやEVへの開拓を技術的にも市場の上でも傾倒する世の中になっていました。
 おまけに96年式の車体はあちこち老朽化も進み、予定通りに壊れるところが壊れるし、気に入っていたタイヤ銘柄もサイズ落ちする。古いクルマを維持している人たちの苦心はこういうことなのと痛感します。
 その中で驚異的な耐久性を示しているのが、予想もしていなかったトルクコンバーターの無故障継続。続いてデフの頑丈さ。オルタネータやコンプレッサーが交換修理される中、駆動系の重要部分がまだ健在なのです。
 従前の最長不倒距離到達から、4年が過ぎました。最後の最後で、宇宙的スケールで言えば、地球の静止衛星軌道まで戻ってきてからが長かった。4年の内の実に1年を費やしていました。
 2020年6月の帰還を果たすと、世の中は新型コロナウイルスの蔓延で生活様式が一変し、7月に予定されていた2度目の東京オリンピックも延期という、ネガティブな夏の入り口です。帰還翌日に梅雨入りしたとたん、各地で豪雨災害も頻発し、梅雨が明けたら明けたで警戒警報の出る酷暑。
 そしてやることをやり切ってしまった、目標の無い領域で走り続ける頼りなさや、コロナ対策でオフラインミーティングも開けないもどかしさが今の心境です。
 でもまあこれは「血を吐きながら続ける哀しいマラソン」とは違いますから、人車ともに年老いたなりに、どこまで行けるかを楽しもうと思います。