-1600cc5ドア「NOMADE」-



-1600cc NOMADE エスクード・ベストセラーモデル-
 
 エスクードをベストセラーと言えるか
どうかは微妙だが、市場に確固たる地位
を築いたのは、1990年10月に登場
したTD01W「ノマド」であろう。
 フランス語の「遊牧民」というサブネ
ームを与え、ハードトップに対してホイ
ルベース280mm、荷室長295mm
をストレッチし、後部座席用ドアを追加
した。それでも全長を3975mmに抑
え(国内のフェリー運賃対策なのか?)
車重も120kg差にとどめた。
 エスクードの登場時、ユーザーが最も
厳しく指摘したのが、荷室が無いに等し
いという部分と、乗車定員だった。荷物
を積みたければ、ハードトップやコンバ
ーチブルは後部座席をたためばいいのだ
が、助手席スペースまで使っても、長さ
1600mmの荷物は載せられない。


 
 それ以前に、乗車定員(ショートは5ナ
ンバーで4名)分の荷物を積みきれないケ
ースがあった。ショートモデルは荷室ユー
ティリティをシートアレンジで稼ぐ手法を
とるため、後部座席をセパレートタイプに
してある。
 ノマドは、6:4の分割後部座席を採用
して、最大で5人、シートアレンジで長尺
ものも積載可能としたところが特徴だ。リ
アシートにリクラインニグ機構がないこと
は不評であったが、ボディ形状を極力崩さ
ず、後方にスペースを確保したデザインは
巧みなものと言える。


 
 この時期、エスクードは最初のマイナ
ーチェンジを受け、エンジンが1カム4
バルブ式100馬力仕様に変更された。
 SOHCとDOHCの、中間層のよう
な位置づけだが、オフロード使用時の中
低速トルクを生かしつつ、少しでもオン
ロードクルーズのレスポンスを稼ごうと
した成果がそれだ。ただし、パワー・ト
ルクに関しては、あくまで実用域レベル
にとどまっている。
 また、ATがロックアップ式・OD付
き4速タイプに変更され、最終減速比や
変速タイミングの制御もリファイン。従
前の3速ATに比べてワイドレンジな設
定となった。5速MTでのクラッチ径も
215mm(1型は200mm)へ拡大され、クラッチワークが楽になった。
 ノマド専用の装備では、フロントディスクブレーキがベンチレーテッド式に改良さ
れたこともあげられる。


 
 スズキ広報資料によれば、ノマドは90
年9月、レジントップが10月の発売とな
っている。ノマドの登場時期から考えて、
比較的早い段階からロングモデルの開発は
始まっていたはずである。
 いずれにしても、エスクードが本格的に
ブレイクするのは、このノマドによってと
言い切れるほど、市場の隙間を突いたライ
ンナップであった。
 当時、ミドルクラスの4WDは、ハイグ
レードモデルになると400万円を越える
見積額が当たり前だった。質感や豪華な装
備にまでこだわればきりがないが、ノマド
は250万円程度で乗り出せるコストパフ
ォーマンスの高さを有していた。そこを
「貧相だ」という人は、最初から乗らなけ
ればいい。


 
 当然のことだが、ノマドサイズはエスク
ードの開発段階で視野に入っていた。これ
がなぜ、2年遅れての登場となったのか、
車体のディメンション、排気量、サスペン
ション形式などの基本案を提言した“エス
クードの父”から意外なエピソードを聞く
ことができた。
 実はG16Aエンジンの開発において、
当初は不安材料があったそうで「失敗する
おそれもある」という懸念が持たれ、最悪
の場合は既存のG13Aを搭載するケース
も考えられていたようだ。さすがに130
0ccでロングボディーを引っ張るのは難
しいだろうと、ノマドのデビューはずらさ
れることになったという。
 もちろんその懸念はG16Aの完成時点では払拭されており、ショートボディのエスクードは、車格に見合った
必要充分なパワー・トルクを与えられている。2型に移行する際の1カム4バルブ化などのマイナーチェンジは、
ノマドの車格に相応の出力特性をもたらしており、同じエンジンに進化したショートは、より機敏なコンパクト四
駆に成長したことは言うまでもない。
 ところで、G13Aを積んだエスクード(ショート)は、実際に存在した。当時の北米において若干販売され、主
にレンタカーとして活躍した。




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