-V6・2000ccシリーズ-



-2000cc(H20A)シリーズ・SUZUKIが誇るフラッグシップエンジンの先駆け-
 
 エスクードTA11W(同系でノマドの
TD11Wも)は、スズキ初のV型6気筒
2000ccエンジン搭載車だが、このH
20Aというエンジンは、1994年11
月から96年10月までのわずか2年間で
姿を消し、主力商品はL型4気筒2000
ccのJ20Aにスイッチされた。
 ここでV6がラインから完全に消えてし
まえば、エスクードには、少しばかりの伝
説を紡ぐ余地があったかもしれない。
 しかし、H系V型は2500CCへ格上
げされ、さらにグランドエスクードの登場
で、2700ccという派生に至り、不思
なラインナップを構成して3代目の2型に
及んでいる。


 
 H20Aには、96年2月を境とした前
期型と後期型の区別もなされる。その大き
な差異は、140ps/6500rpm、
18.0kg‐m4500rpmの前期型
に対して、パワーで5ps力、トルクで0
.7kg‐mというマイナーチェンジに過
ぎない(細部のリセッティングは省く)。
 1型の登場はセンセーショナルであった。
 数値だけを見るのであれば、TD11W
ノマドのパワーウエイトレシオは9.5k
g/psと、1600ハードトップより優
れている。
 なによりスズキが開発するV6エンジンであったことが、ユーザーには魅力的であった。
 スズキのエンジンは、オートバイのそれにおける耐久性とパンチ力では定評があったから
であり、コンパクトなエスクードでV6を回せるというところが、最大のアピールポイント
となった。
 ハードトップを例に挙げれば、全長3715mm(ホイルベース2200mm)、全幅で
1695mm(トレッド:前1455mm、後1450mm)のディメンションに、重量が
1250kg(5MT)。重量比はほぼ50:50であったから、重心の高さとフロントグ
ラスの角度さえどうにかすれば、ちょっとしたスポーツカーをイメージさせる。そして、エ
スクードはパートタイム4WDであり、オンロードでFR、オフロードで4WDと、なかな
か自由奔放な走らせ方ができるのである。もちろん、この妄想にはちょこちょこと綻びが出
てくるのだが・・・


 
 全幅を60mm太らせ、トレッドが拡大
された分をブリスターフェンダーの外側に
スプラッシュガードと称したオーバーフェ
ンダーで処理したデザインは不評を買った
が、ノマドにおいてはきわどく良いバラン
スを得ている。
 トレッドが拡大された事で安定性が16
00ccシリーズと比べると遥かに増し、
さらにホイールベースが長いノマドに至っ
ては、1600ccエスクードの軽快な走
りとは別の少々重厚なものとなっている。


 
 実際、1600ハードトップの初期型か
らのスイッチでは、全く別の車となってい
た。1型1600のエンジンなら、ネット
で言えば、ほぼ2基分のパワーを有してい
るのである。
 しかしこれが呼び水となり、他社のライ
トウエイト4輪駆動車にパワー競争の追随
が始まり、2型のV6へとリファインされ
る。テンロクエスクードとの比較ならばセ
ンセーショナルなV6であっても、200
0ccクラスではトルクが細く、回せば速
いかと言えば頭打ちが早い。クロカン4駆
であるが故の矛盾もはらんでいた。


 
 この2型は、同クラスの4WDと比較さ
れると、「こんなものでは低中速トルクの
貧弱さの改善にはならない」といった厳し
い雑誌評価が、当時は下されていた。果た
してそんなものなのかと、この“2型”に
乗ってみると、取り回しも重量も大きなノ
マド系でも、ショートホイルベースのハー
ドトップに引けを取らないレスポンスを見
せてくれる。
 1型ハードトップがAT車だったら、2
型ノマドのMT車のほうが、きびきびとし
たドライブをしやすいというのはちょっと
驚きだが、この時期、既にエスクードのユ
ーザー市場は圧倒的にノマド系へシフトし
ている。
 そしてこの改良型とも言うべきV6は、もともと4速ATとの相性がいいという素性もあ
り、ハードトップに対してノマドであっても、初期型にあった低中速トルクが細く、回さな
いと乗りにくいというハンデを、それなりにカバーしてくれた。
 しかしながら、2000ccとしての2型V6エンジンは、わずか10ヶ月未満の短命に
終わる。1、2型の比較は、あくまでそれらを乗り比べて得られる評価であり、総論として
は、V6−2000ccは四駆としてみればピーキー、ステーションワゴン(あえてこう書
くのは、当時はまだSUVというカテゴリーが生まれていなかったため)としては、5名乗
車での走りでトルクが細いという印象を払拭しきれなかった。
 同じスペックは直4−2000ccモデルでも可能であり、コスト面や整備性においても
直4が有利。そしてG型を継ぐブロックとしてJ20A型が登場してくることで、主力は交
替する。ただ、V6モデルが不評だったのかと言えば、二次ユーザー以降も含めた現存個体
の数をみても、不人気車とは思えない。油圧制御系の不良をはらんだ個体や、総括的に燃費
が悪いという事例も残したが、V6は走り出してしまえば快適なモデルだった。
 さて1、2型の見分け方だが・・・外観だけでは年式を判別するのは非常に困難だ。ただ
し、96年2月に発売されたGリミテッドだけは、限定特装仕様であるため、外観での判断
が容易だ。




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