-ESCUDO L4−1600-



-クロカン未満、クロスオーバー以上-


 これはエスクードというよりスズキの新型SUV(ビターラ以前)
と前置きした方がいいかもしれないが、その新型車は早い時期から、
2代目SX4のプラットホームを共有することが示唆されていた。
 3代目でミドルクラス市場にトライしようとした矢先にアメリカ
で生じたリーマンショック以降、メーカーサイドは再びコンパクト
クラスへの転向を図り、その途上でフォルクスワーゲンとの包括提携
問題も抱え、2代目SX4自体の開発が紆余曲折を余儀なくされた。
 北米市場からの四輪撤退という逆風も、3代目には不運であったし、
世の中がエコロジー志向に傾倒し、東日本大震災という未曽有の災害
も重なった。
 四輪駆動車が優雅を極めた高級志向だとは思わないが、市場はクロ
カンタイプを過去のものとし、ユーザー層のアウトドアニーズもソフト
なものへと変化していった。
 しかし台頭してきた新たなスタイルは、さらなる乗用車かを図りなが
らもSUVの衣をまとったクロスオーバー。まだ新型四駆の道は閉ざさ
れてはいなかったのだ。

 そうして生まれたのが2代目SX4、Scrossだ。SUVのスタイルを持ちながら、操作性は乗用車ライクの扱いやすさ。5人の乗車を基準とし、
荷室スペースにもそれなりの余裕を持つ。だがこれは、裏を返せば垢抜けたステーションワゴンともいえる。
 ビターラ、という商標は、80年代末期にスズキが提唱したスタイリッシュな小型4輪駆動車の欧州名である。
 この名を継承するからには、その車体は単なるクロスオーバーであってはならない。
 市場ニーズの変化に対応しながらも、過去の骨太さを捨て去っても、ビターラはSUVの域にとどまらなければならなかった。二律背反の課
題を下敷きとしつつ、環境問題や燃費基準へのトライアルもクリアし、最低限ビターラと呼ばれて支障の無いものづくりが課せられたのである。
 ビターラはそれに応えた。だからこそ、日本国内投入ではエスクードの名を継承するに足る1台となりえたのである。
 エンジンの横置き化、FFベース、ローレンジも持たない4WDがエスクードであるはずがない。
 そのような意見も、当然あるだろう。
 そもそも、プラットホームが別物なのだから。
 だが、全否定してしまえばそれまでのことだ。仮にもエスクードとして登場したこのSUVは、それでは時代の趨勢に対峙しながらどれだけ愉快
で快適な走りをもたらすのか。それを見届けずに終わらせるのは早計だと考える。
 
   


 4代目の基本性能はNEWSのページを参照していただくとして、どこ
となく過去のモデルのイメージを残しながら、スペアタイヤの無い跳ね上
げ式バックドアや6速ATを搭載するなど、いくつかの具現はニーズを受
け止めたものとなっている。だがマニュアルミッションの不在やリアサス
ペンションの凡庸さなど、粗はいくらでも指摘されるだろう。
 それらの声を聴いていると、もう無いものねだりにしか聞こえない。眼
鏡にかなうかどうかは十人十色の意見があるものだから。幸いにも、今回
のモデルは、メーカーホームページの試乗車リスト以上に、ディーラーに
即日配置されているので、一度は乗ってみることをお勧めする。
 どこかふらふらとしていた初代、ハンドリングはしっかりしたがパワー
を食われ気味だった2代目、大柄化した3代目に対して、新型は軽快に走
る。同じM16A型エンジンのスイフトほどというわけにはいかないが、
1600ccに排気量を落としたとは思えない、3代目2400譲りの力
強さもある。
基本性能の解説
(http://www.ne.jp/asahi/t-bird/base/esclev/news/dbayd21s/4rd.html)
    
 

 この軽量化のためか、スペアタイヤを装備せず、エアバッグシステムも最低限に切り詰めているところは、今どきのクルマらしいと言うよりも親切心に欠ける。
 事故を起こす前提で運転するなら乗らない方がいいのは確かだが、快適と安全は両輪の存在だと思う。 燃費を犠牲にしてでも、必要な装備は搭載すべきだ
ろう。
 ハンガリーからの輸入という事情からの、販売台数の消極化も気になる。かなり長期間の納車待ちを強いるのは、ユーザーの反感を買うこととなる。
 ただ、すでに欧州版に1400ターボモデルが登場しているように、この4代目初期モデルは、長期間の販売が前提とされていない。
 スズキはすでに、2020年までにエンジン機種整理を行い、最大排気量を1400ccに抑える方針で今後のモデルラインナップを固めていくからだ。エスクード
もまた、その例外ではない。
 現状の税制では、市場はそれを望むと思われるが、1600の自然吸気エンジンは、3代目のショートモデルのときよりも扱いやすくなっている。この軽快さとそ
こさこのパワー感を失うのは、いささか寂しいものがある。





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