-ESCUDO L4−1600 3door-



-需要を受けて追加されたが、出てきたタイミングは過酷-
 
 「3ドアモデルの復活を!」
 あるいは、コンバーチブルの復活を・・・
 という声は、2代目エスクード以来、ずっと期待
と要望が続いていた、独特のニーズであった。
 海外輸出モデルには、それらは存在し、3代目に
おいても3ドアモデルはガソリンエンジン、ディー
ゼルエンジンのラインナップが供給されている。
 誰とはなく、「ちくしょー、そのラインからちょ
っとだけ国内向けに出してくれないのっ?」と思っ
ているファンは、潜在的に多かったはずだ。
 そしてそれが実現した。ところが追加モデルの位
置づけや、新機軸となるSX4のデビューと重なっ
たXCグレードは、売り手からも買い手からも冷遇
されているような印象さえ受ける。
 1600cc、CBA−TA74Wは、今のところXCと呼ばれる1グレードで5速MTのみ、5ドアモデ
ルにあるゲート式4ATのさらなる追加は未定だ。
 搭載されるエンジンは、エスクード唯一となるハイオク仕様、直4−DOHC16バルブのM16A。スイ
フトスポーツと共通のエンジンだが、最大出力は78kW/5900rpm(106ps)、最大トルクでも
145Nm、/4100rpm(14.8kgm)と、数字だけで見た場合は非常に控えめだ。
 5ドア2000ccに対する車重比は110kg減の1420kg程度でしかなく、さらにはフルタイム四
駆ではあるものの、ローレンジを廃したことが、大きな衝撃であった。


 太いCピラーでロングボディと印象を変えた外観
は、初代や2代目よりも視認性は良くない。そして
大柄なボディは、初代のロングボディ並みの全長。
 それでも、3代目同士で見れば非常にコンパクト
なディメンションとなっている。当然、それらは後
席以降の荷室スペースを犠牲にしたもの。歴代エス
クードが抱えてきたジレンマ(狭い)を、逆手にと
っての内寸構成だ。
 リアシートは50:50のセパレートとなり、乗
車定員も4人となった。
 XCは全てのタイヤが16インチ。XEと同様の
225/70R16サイズ。マルチリンクリアサス
とは、こちらの方がマッチすると思われる。
 4WDではあるが、トランスファも電子制御デバ
イスも持たないエスクード。もちろん過去にも、四
駆そのものを排除した4x2モデルも存在したわけ
だが、今回は“生活四駆”と呼ばれたジャンルをね
らっているかのようだ。
     


 
 追加モデルであってもニューモデルには違いない。
 にもかかわらず、メディアも積極的に取り上げる
ことがなく、なにより展示車、試乗車がなかなか見
つからないということが、XCの不遇だ。
 「どんな車か知りたい。と訪ねてくださるお客様
は、意外と多いのですが、いかんせん現車がありま
せんので、充分なご紹介ができていません」
 あるディーラーのコメント。
 スペックだけが一人歩きしてしまい、重くて非力
で、ローレンジもない。という部分に、ハイオク仕
様のエンジンに対する燃料高騰というイメージダウ
ンが、たまたま巡り合わせてしまった。
 これは、せっかくの3ドアモデルに対して、痛い
仕打ちだ。
 しかし、VVTの搭載や電子制御スロットルなどの効果によって、比較的フラットなトルク特性と、乗
りやすさを実現している。SUV以上の性能を求めては期待はずれとなっても、素性のいいコミューター
として、評価は高められるはずなのだ。
 だが、それがポリシーとはいえ、インプレッション記事を書く前から「ローレンジを追加して」と切っ
て捨てる?雑誌の記事構成は、いかがなものかと思う。
 どう使ったらいいのかさっぱりわからない。中途半端だ。
 それはエスクードの悪評であり、実は「好きなように使い倒して」という裏のメッセージでもある。
 良くも悪くも、ユーザーがおもしろ楽しく使わなければ、本領の見えてこない車。その最たるモデルが、
3ドアXCなのではないか。このサイズが不満なら、同じ3ドアXCをグレード化しているジムニーを買
えばいい。それでも、エスクードの3ドアを手にした人には、5ドアでは気づかなかったおもしろさを得
られるはずだ。
 なにより、これかっこいい(その部分は大きく主観にゆだねることとなるが)というのは、大事だ。
 残念ながら、この3ドアXCは、1年弱の短命でカタログ落ちした。コミューターとしては手に余り、
四駆としてはローレンジを持たない部分が、どのように使いこなせばいいのか、ファン層には掴みきれな
かった。ローレンジはともかく、J20Aを積んでいたら・・・という希望を、あとから言っても始まら
ないのだが。
     






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