-ESCUDO L4−2400シリーズ-



-3型登場 ライバルを追撃せよ-
 
 2008年6月、3代目エスクードがビッグ
マイナーチェンジを果たし、XE、XGグレー
ドは直4の2400ccにエンジンが変更され
た。
 排気量のアップと、より高い静粛性への取り
組みが、このマイナーチェンジにおける最大の
アピールポイント。30mmほどフロントバン
パーを延長しているが、意匠の面では大きな変
化はない。しかし間近で見ると、フロントのス
ラント角度が強めに出ていることがわかる。ま
た、フェンダーやエンジンフード及びヒンジな
どに衝撃吸収構造を取り入れ、安全性の向上も
図っている。
 スズキ自販茨城・下妻営業所さんのご厚意に
より、いち早くオンロードでの試乗ができた。
 XE、XGは、3型でもそれぞれ5速MT、ゲート式4ATの選択が可能。ESPはXGのみメーカ
ーオプションとしてオーダーできるが、これを選択した場合は、センターデフ内のカム式LSDがオミ
ットされる。さらにXG単独のグレード内でも、ESP装備車(SRSカーテンエアバッグ、フロント
シートSRSサイドエアバッグを同時装備)のほかにMD/CDプレーヤー装備車、HDDナビゲーシ
ョンシステム装備車が、メーカーオプション車として振り分けられる。
 新たに搭載されたエンジンは直4J24Bで最大出力122kW/6000rpm(166ps)、
最大トルク225Nm、/4000rpm(22.9kgm)。インテークコントロールバルブにロー
タリー式可変吸気システムを採用し、可変域を三段階に設定している。吸気ポートにはタンブル流(縦
方向の渦)を発生させるタンブルコントロールバルブも導入された。このバルブを閉じることにより、
吸気ポートを狭め、燃焼室に発生したタンブル流が混合気の均一化を促す。エンジン始動時などにガソ
リンを薄くする効力があり、排ガス性能の向上を担っている。スロットルは電子制御式。
 耐久性と静粛性面では、ダクタイル鋳鉄製ベアリングキャップをロアケースに鋳込み、クランクシャ
フトの温度膨張差を抑制することで、振動と騒音を低減した。さらにピストンの運動による振動を相殺
するバランサーシャフトをオイルポンプと一体化したほか、タイミングチェーンのサイレントチェーン
化ならびにチェーンアジャスターの組み合わせで騒音を低減させた。ヘッドカバーもフローティング構
造とし、振動を抑えている。


 その他の改良点としては、プロペラシャフトのジ
ョイント部すべてに等速ジョイントを組み込んだこ
とと、このうち前後プロペラシャフトの前側はスラ
イド可能式等速ジョイントとしたこと。駆動系の振
動が伝わりやすいモノコックボディに対する措置と
して、液封デフマウントも採用している。全体的に
は高速走行(時速100km程度)での改善幅が大
きい。実際に、市街地走行では駆動系の音(こうい
うものを騒音と感じるはどうかと思うが)は、ほと
んど気にならない。

 自発光式の三連メータには、速度計下にインフォ
メーションディスプレイが移植された。慣れの問題
なのだろうけれど、瞬間燃費をこうも積極的に伝達
させる必要があるのかどうかは疑問だが、後続可能
距離と平均車速を切り替えの選択肢に追加したのは
面白い。そういえば、ターンシグナル動作音を電子
的に発生させるようになった。静かなら静かで文句
を言われていたのも苦労だったのだろう。 
 今回の試乗は3型XGの4AT。車重は1620kgとなった。2.7XS並みのウエイトで、数字の上では排気量が小さく、パワー・
トルクも下回るわけだが、2.0XGとの比較では、市街地走行での加・減速には何ら不満はない。この試乗では 登坂のワインデ
ィングや未舗装路の走行が出来なかったが、Dレンジオンリーでの登坂には期待が持てそうだ。
 偶然にも、試乗の前日に2.7XSを運転していたため、両者の出足感覚などを比べることができる。2.7XSの発進加速を和ら
げながら、2.0XGで不足気味であった低中速のトルクをカバーしてくれる。 出足の感覚は、初代のV6−2500ccモデルよりも
力がある。ただしV6−2500ccモデルとは約270kgの重量差と、通常走行時がFRかフルタイム四駆かの違いがあり、XGの
走りは、歴代のエスクードを知る者にとっては、軽快さという言葉は出てこない。むしろ重厚さの印象だ。
 それでも、誤解されたくない部分として、重ねて記しておくべきことは、アクセルワークに素直な反応をする点。これがスタンダ
ードな乗り味ならば、細かいことは気にならない。旋回性能がわりと良いので、ステアリングホイールは、外径も太さももう少し
あった方が扱いやすいが、それも個人差だろう。

     


 
 こうした乗り味演出のひとつには、リアディス
クブレーキの採用があげられる。多くの声が、今
どきドラムブレーキなんて・・・と評していた部
分にも、改良の手が及んだ。やれやれ、エスクー
ドも迎合を避けられなかったかと思いきや、「パ
ーキングブレーキ機能」と控えめに言いながら、
ドラムブレーキも内蔵している。
 リアディスクブレーキの装備に対応し、リアサ
スペンションのサブフレームやダンパーについて
も、設計とチューニングを見直したという。一目
した限りではわからなかったが、ロアアーム取り
付け部分の剛性が上がっているとのこと。体感の
域なので短時間試乗ではなんとも言えないが、2
型以前と比べて、いくらかしなやかな足まわりに
設定されたように思える。カタログには出ていな
いが、ブッシュ類の材質も変更されているそうだ。
 言い訳がましい結びとなるが、グラベル路面へ持ち込めなかったため、センターデフのロック、ローレン
ジでの走行体験についてお知らせできない。個人的には、ESPの無い仕様でのオフロード走行でも、昨今
のユーザーが出かける環境では、よほどの豪雪や凍結でもなければ、センターデフ内のLSDがあるだけで
充分と感じる。カム式LSDの効き目は、エスクードのものはそれほど強力ではないにせよ、なんでもかん
でも電子デバイスの制御が介入する仕様よりも、ドライバーの手足に委ねられる領域が残っていた方が、車
を走らせることが楽しいと思えるからだ。
 見てくれや改良点は、どんどんオンロード寄りに振られている3型だが、林道や低中難度のオフロードコ
ースでは、これらの改良点は有効に活用できそうだ。快適さだけに目を奪われてはならない。快適さに関し
ては、他社SUVに追いつこうとしている段階。他にはない性能の活かし方を、乗り手が引き出していくこ
とが重要だ。3型エスクードは、まだその道を閉ざしてはいない。
      





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