-ESCUDO V6−2700シリーズ-



-成熟の道を辿るH27A-
 
 
 エスクードの魅力には、ライトウエイト、
コンパクトボディ、FRと直結四駆の二面性
といったキーワードがあった。
乗用車的で、それでもクロカン四駆のはしく
れ。そこにどれほどの斬新さがあったのかと
言えば、実はあまり大したことではない。
 しかし市場はそれを歓迎し、ライトクロカ
ンだとかアーバン四駆だとか、解ったような
よく解らないような、一つのジャンルを産み
落とした。
 このことを思い返すと、SUVという言葉
も、相当に曖昧模糊としたもので、とどのつ
まりは、市場戦略の売り文句に過ぎない。
 大事なことは、そのクルマの中身なのだ。
 2700ccはXSと呼称する1グレード、5速ゲート式ATのみの設定として登場したが、
2007年にはSRSカーテンエアバッグ、フロントシートSRSサイドエアバッグ、ESPを                 
省略したXGグレードが追加された。この装備はメーカーオプションとして2.7XGでの注文は
可能だ。
 搭載されるエンジンはV6のH27Aで最大出力135kW/6000rpm(184ps)、
最大トルク250Nm、/4500rpm(25.5kgm)。L4シリーズよりもショートスト
ロークなボア・ストロークや圧縮比は、グランドエスクードのものと変わらない。可変吸気システ
ム最適化するなどのリファインを施し、従前のH27Aよりも5kW(7ps)、8Nm(0.5
kgm)のパワーアップを果たした。
 車重の1620kgは「そんなに重いのか!」と驚きかけたが、実際にはグランドエスクードの
据え置きであった。なんのことはない、H27Aには、この重量を動かす実績があったのだ。


 外観は、2000ccモデルと共通。フェンダー
のV6バッヂだけが相違点。車体のディメンション
も共通で、エクステリアに関しては、あらためて書
きつづることがない。4WDのモードセレクタなど
操作系もほぼ同じだ。
 XS独自の標準装備には、サイド+カーテンエア
バッグなどがある。そして、後述するESPが、こ
のモデル最大のエポックメイキングとなる。
 Electoronic Stability Programとは、滑りや
すい路面での発進や加減速、ブレーキングによるタ
イヤのスリップやコーナリング時に生じる横滑りを
抑えて、走行安定を補佐するシステム。電子制御ス
ロットルとエンジンコンピュータのリンクでエンジ
ントルクをコントロールする。また、4輪のブレー
キを独立制御し、ペダルを踏んでいなくとも、必要
となるタイヤへの制動を、必要な出力でアシストす
る。


 ESPは、エンジントルクの適正制御とブレーキアシスト(ABSとは別制御)で、スリップしている車輪に制動力をかけ、スリッ
プしていないトラクションのかかる車輪に駆動力を伝達する。
 このプログラムは、フルタイム四駆のトランスファーモードが4L・デフロック状態での制御マップも組まれている。4L・デフロッ
クモードにスイッチすることで、EPS自体がローモード専用制御に切り替わる。ただしこのとき、オーバーステアやアンダーステ
アの挙動をアシストするスタビリティコントロールは作動しない。
 ESPはSUZUKIの開発システムなのか?と確認したら、ダイムラー・クライスラーAGの登録商標であった。エンジン・操舵角・
車輪速度・ヨーレート及び加速度などの各種センサーと、それらの監視・制御コンピュータと一体式の油圧ユニットでシステムが
構成される。

 
     


 
 以上のことを踏まえて、XSの素性を試してみる。
 サスペンションシステムの先代からの進化、17イ
ンチタイヤの相性が今ひとつという点は、XG同様だ
が、車重増加に応じたセッティングのせいか、ゴツゴ
ツ感は残るが、突き上げは、ややマイルドになってい
る。
 V6エンジンには「静粛性となめらかなフィーリン
グ」という評価の言葉があり、L4の瞬発力やパンチ
力と別格の表現が与えられる。
 XSに関して言えば、それらは的はずれではないが
少し違う。「粘りのあるエンジン」(ただし舗装路面
の登坂でのフィーリング)と言った方が適当か。
 感心したのは、低速からぐいぐいと(ここの表現が
難しい。ぐいぐいだが、滑らか)登っていく。Dレン
ジから4速へのダウンは起こるが、粗野なキックダウ
ンではない。そしてパワーモードは使わず、イージー
に登坂していくところが頼もしい。
     


 ダートを走る。いつ、どのようにESPが動作しているのか、実はよく解らない。あえてESPを 解除する(スイッチを長押しし、メータークラスター内にOFFのインジケータが点灯するのを確認 する)と、トラクションコントロールよりもスタビリティコントロールから解放されることが、ステ アリングの感覚でわかった。
 ESP無しの走行は、FRのままダートを走っている雰囲気に近づく。 ただし、ESPをカットして走行できるのは30km/h未満。「えっ?」と思われるかもしれな いが、試乗は林道で行っている。出ている速度はせいぜい20km/h。逆のことを言えば、この速 度でフラットな林道では、ESP自体の出番がなかった・・・
 XSを走らせてみたことで、3代目のエスクードが狙っている本格的なSUVというデュアルパー パス性が、ようやく近づいてきたことを実感した。“S”の部分はスポーツなのか、スペースなのかで、 まだ意見が分かれるところだが、ライトウエイトでなくともスポーツ性は新しい領域に踏み込んだ。
 “U”の部分については、まだ改善の余地がある。しかしそれは、走り始めた3代目自身の進化に期待 しよう。こうなると、せっかくの2000ccモデルの充実にも目を向けてほしい。1人や2人は、 この3代目で、果敢にクロカンフィールドに飛び込んでいくユーザーが出てくるかもしれない。XG やXEは、XSとは異なる良さを、まだ埋もれさせていると思える。
 その指標に、XSはなるべきだろう。
 
     




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