-V6・2500cc-



-2500cc(H25A)  初代V型最後の進化-
 
 エスクードTD61Wは1グレードモデ
ルのATミッションのみ。2493ccの
H25Aを搭載し、96年10に登場した
L型4気筒2000ccの51系シリーズ
と共に、初代最後の車種の一つとしてライ
ンナップされた。
 初代最初にして最後の3ナンバー登録と
いう枠組みだが、ボディサイズはTD11
系を踏襲し、51系の装飾を施した。外観
上の識別は、リアハッチのV6−2.5を
刻んだ樹脂製バッヂだけである。内装も、
基本的にはTD51系と同じ。エンジンだ
けがこのモデルの存在価値となっている。
 


 
 2000ccV6に対して、当時発売さ
れたPR雑誌のなかで、SUZUKIの開
発スタッフは、
「H20Aは完成の域ではない。このエン
ジンの成熟はこれから。その答えがH25
Aに盛り込まれている」
という内容のコメントを寄せていた。
 V6−2000というエンジンブロック
はオリジナルであり、意欲作だと感じてい
ただけに、ショックな発言だったが、排気
量の増加に伴う吸排気系の設定変更なども
施されたH25Aは160ps/6500
rpm、22.5kg‐m3500rpに
設定され、トルクで走れる安定感が確実に
高まった。


 
 ボア84.0mm、ストローク75.0
mmへの大型化と、共鳴過給システムによ
るトルクの厚みは、パワーに関してはレス
ポンスを感じるところまで進化していない
が、トルクの余裕は感じることが出来る。
 この時期主力モデルであったTD51W
(AT)と乗り較べてみると、トルクの太
さは歴然としており、登坂時におけるキッ
クダウンの頻繁な51系よりも、イージー
にワインディングを駆け上がる(ただし、
比較した51系は足まわり変更やタイヤの
大型化も行われているため、固体としての
パワーロスが大きい)
 ボディ側の遮音・遮熱対策も若干向上し
ており、回したときの騒々しさは、11系
よりもずっと抑えられている。
 このモデルは、2代目に引き継がれ、 さらにグランドエスクードを産み出し、 3代目のXSに受け継がれていく。
 SUZUKIはグランドエスクードを (7人乗りは)市場に合わなかったとカ タログ落ちさせたが、H27Aエンジンを
棄てることはなかった。
 メディアは3代目を半ば無理矢理コンパクトクラスと 称しているが、SUZUKIはどこかに ミドルクラスへの挑戦
を描き続けてきたのではないかと想像する。
 その最初のトライアルが、TD61W なのではないか?


 
 ESCLEV判官贔屓で解釈すると、
テンロクハードトップを少しだけワイド
トレッド化し、70gもの燃料タンクを
与え、そのボディにV6−2000cc
というエンジンを与えただけでも、エス
クードのホットモデルを生み出せるきっ
かけがあったように思える。
 その願望は、市場人気を占めたノマド
の充実に力を注ぐこととなり、叶うこと
はなかった。しかしノマドのボディサイ
ズとウエイトのために用意されたであろ
うV6が、ハードトップにも搭載された
事実は、大きなエポックだったのだ。
 V6を得たノマドは、直4テンロクノ
マドよりも力強い走りを見せたが、実際
にその恩恵を受けたのは、さらに軽量の
ショートモデルに他ならない。
 こうなると、ノマド系エスクードは、
よりパワーを欲し、より安定したトルク
が欲しくなる。さすがにこの2500モ
デルを主力商品とするには、コストや価
格の壁が立ちはだかるため、メインの車
種をL4−2000シリーズに譲ること
となったが、エスクードのフラッグシッ
プモデルという意味以前に、将来のミド
ルクラス参入への布石と、ノマドサイズ
のコンパクトボディの価値観とを両立さ
せようとした、SUZUKIの苦悩が感
じられる。
 だがそれは、きっと苦悩ではなく、開
発陣のいたずら心の生み落としたものだ
ったのだと解釈する。
 




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