《特救司令 移動指揮車》

 WSP/特警ウインスペクターは、その活躍を国際警察機構に注目され、世界的な捜査救急活動の足がかりとして同機構に召還された。WSP本部長の正木俊介はしかし、WSPの実績を総括して、捜査・逮捕能力の高さは得られたものの、人命救助の質的な課題が残ると自己査定し、人命・人心含めての、奥深い組織運用を目指した。SRS/特装救急警察ソルブレインの編成である。
 SRS編成は、WSPの実績による省庁間の好感触や、認知によるものだが、機動力の整備に驚くほどの投資がなされている。しかも、WSPと交代してすぐさま実働状態に入れた準備状況から、設備機器、機材などの開発は、WSP以前から進められていたものと思われる。全長30mにも及ぶ救助母艦SS−1などは、おそらくWSPの活動支援を念頭に開発してきたものが、運用部隊の方が組織替えしてしまった事例ではないだろうか。現に、SS−1は独自の運用チームでソルブレインをサポートすることから、WSP側の組織運用のなごりがあるのかもしれない。
 しかし、ハイテク機器を満載し、実験的なトライアルをも受け入れやすいレスキューポリス・プロジェクトには、内需拡大の期待を、様々な企業が抱いていた。自動車産業も、例外ではない。
 ソルギャロップは、水素燃料を用いた高性能タービンエンジンを搭載し、最高速度、780km/hという駿足。そしてソルブレイン行動隊長・西尾 大樹が装甲強化服・ソリッドスーツを装備(ブラス・アップ)する機能などを盛り込んでいるが、そのデザインは西尾警視正がブラス・アップしたソルブレイバーの姿とは対照的な、おとなしいデザインだ。これは人命・人心救助という目的に、落ち着いたイメージを投影させた開発メーカーの機転であろう。また、装甲服着用で運転できるサイズとして、ウインスコードのようなアメリカンサイズの車輌を導入していたWSPに対して、このメーカーは、コンパクトボディであっても搭載能力の高さと室内寸法の確保をアピールポイントとして、受注競争を勝ち抜いたのである。そしてもうひとつ、ボディ架装において特殊車両といえども市販車とのパーツのキャリーオーバー比率を高めたという点で、ベースとなっている市販車への人気と売り上げにも評価がフィードバックされることを狙っている。
 ただ、ソルギャロップには量産試作的な思惑はあっても、材質面での市販車との共通化は図ることが出来なかった。耐熱・防弾・耐衝撃性能を有しながら、超軽量化された専用素材は、市販車投入にはコスト割れを引き起こす。そのため、市販車用には一般材質が使われ、重量が嵩んだほか、ガソリンエンジンによるパワーユニットも平凡なものとなった。なにより、その後襲ってくるバブル経済の崩壊が、市販車には手厳しい市場の冷え込みとなった。
 それでも、ソルギャロップは、随行するSRS−02ソルドレッカーと共に、攻撃的な雰囲気を持たないシルエットとカラーリングで、市民感情に対して配慮の行き届いたパトロール車輌として評価された。